連載

2022/6/10

猫小説『佐々木テンコ』第8章「ランからの、最後のお願い」

猫一匹拾っても、世界は変わらない。でもその猫と家族にとっての世界は、まったく違うものになる。実話を元にした猫小説、ついに最終回! 乳腺の腫瘍が見つかり、手術を受けたボンビ。それから月日は流れ……。 ランとプが居間の壁に紙を貼ってから、秋、冬、それからもなんかいか、春、夏、秋、冬……がおとずれた。 ランとプと、わたしとボンビ。 たまにとても遠い場所にプがいても、お昼にランがいる場所がちょっと遠くても、近かったら獣医さんからでも、みんなもわたしもどこかに行っても、このお家にかならず戻ってくる。 でも、ちょっと ...

2022/5/26

猫小説『佐々木テンコ』第7章「七夕の短冊」

猫一匹拾っても、世界は変わらない。でもその猫と家族にとっての世界は、まったく違うものになる。 実話を元にした猫小説、連載第11回。美味しいゴハンで最近太り気味のボンビに異変が…? 「春」「夏」「秋」「冬」がやってきて、「一年」がすぎる。 でもそれは、ただただくり返しているだけではないみたい。ランやプが前よりも、 「歳、くったなぁ」と、ため息をつくことが増えた。   歳をくうって、どんどんと覚えたことが増えていくということなのかな。 それとも太るということなのかな。 わたしもこの家に来た頃よりはず ...

2022/5/12

猫小説『佐々木テンコ』第6章「戻れたね」其の二

n 猫一匹拾っても、世界は変わらない。でもその猫と家族にとっての世界は、まったく違うものになる。 実話を元にした猫小説、連載第10回。仕事先で病に倒れた「プ」がフランスから帰ってきた!久しぶりに一緒に遊んだら、プがこの家にいることが、やっと思いっきり信じられた。 夜にランが帰ってきて、「今日のテンコ」メモをプが読みあげた。 「久しぶりにテンコと雪山ごっこをしたら、ガブッってされた。痛かった。でも最後はペロペロしてくれた。ジャリジャリした舌が、もう、くすぐったいの、なんのって!」 「『今日のテンコ』メモも、 ...

2022/4/26

猫小説『佐々木テンコ』第6章「戻れたね」其の一

猫一匹拾っても、世界は変わらない。でもその猫と家族にとっての世界は、まったく違うものになる。 実話を元にした猫小説、連載第9回。仕事先のフランスで病に倒れた「プ」の元へ駆け付けた夫の「ラン」。ペットホテルで待つ「わたし」に事態は把握できない。それでも強く思った。「なにがあっても戻ってきなさい!」 この家には、キチンとしたお祝いごとや行事というものが、みごとにない。それでもお祝いしたいことはあるみたい。 ランの誕生日 プの誕生日 わたしが来た記念日 ボンビが来た記念日 年越し プはたまに 「子供がいたら、き ...

2022/4/15

猫小説『佐々木テンコ』第5章「ランからの、はじめてのお願い」其の二

猫一匹拾っても、世界は変わらない。でもその猫と家族にとっての世界は、まったく違うものになる。 実話を元にした猫小説、連載第8回。仕事でフランスに旅立った「プ」と電話が繋がらず、いぶかしむ「ラン」。翌日かかってきた電話に涙する「ラン」を見て、「わたし」は確信する。どうでもよくないことが起きている。 ランが言った。 「テンコ。明日から俺は遠くに行くから、今からあなたとボンビを猫専用のペットホテルに預けなければならない。 迎えに来られるのは何日後になるかは分からない。キャリーケースに入るのも、よそで過ごすのも嫌 ...

2022/4/15

猫小説『佐々木テンコ』第5章「ランからの、はじめてのお願い」其の一

猫一匹拾っても、世界は変わらない。でもその猫と家族にとっての世界は、まったく違うものになる。 実話を元にした猫小説、連載第7回。入院先の動物病院から無事帰宅した「わたし」を迎えたのは新入りの「ボンビ」。避けようとしても「ニャッホ~」と鳴いてスリスリしてくる。マイペースぶりに、何だかどうでもよくなってきた「わたし」だった。 ボンビはわたしの真似をする。 ボンビがオシッコを失敗したのは、最初のいっかいだけ。それからはわたしの臭いのついたトイレでキチンと用を足し、失敗をしたことはない。わたしはたくさんのトイレを ...

2022/3/17

猫小説『佐々木テンコ』第4章「あの子が、来た!」其の二

猫一匹拾っても、世界は変わらない。でもその猫と家族にとっての世界は、まったく違うものになる。 実話を元にした猫小説、連載第6回。新入りの「ボンビ」は、キャリーケースから飛び出すとソファに飛び乗りオシッコをじょ~~。と思ったら今度は「わたし」に頭をすりつけゴロゴロ~。とんでもなくマイペースな猫だった! つぎの日からも、ボンビはわたしにひっついてくる。ニコニコしているのか、マジメなのか、遠慮がないのかわからない顔で。 いちど「シャーッ!」とおどかしてみたら、「ニャッホ~」と返されて、つぎはマウントしながら「シ ...

2022/3/3

猫小説『佐々木テンコ』第4章「あの子が、来た!」其の一

猫一匹拾っても、世界は変わらない。でもその猫と家族にとっての世界は、まったく違うものになる。 実話を元にした猫小説、連載第5回。元捨て猫の「テンコ」が夫婦の家に迎えられて早一年が過ぎた頃、新たな保護猫が…!?   一週間がなんかいかまわると、「一ヶ月」。一ヶ月がなんかいかまわるうちに、「春」「夏」「秋」「冬」がやってきて、「一年」がすぎる。 この家には、なにやら暑すぎても寒すぎても壊れてしまうものが、たくさん置いてあるみたい。ランはよく、 「今時エコじゃないね、年中エアコンをフル稼働させている家 ...

2022/2/24

猫小説『佐々木テンコ』第3章「プが、いなくなった」

猫一匹拾っても、世界は変わらない。でもその猫と家族にとっての世界は、まったく違うものになる。 実話を元にした猫小説、連載第4回。売り手が見つからなくて、きょうだいと一緒に捨てられた?――そう推測した夫婦は、保護した猫「テンコ」を正式に迎えることに…。   朝。お昼。夕方。夜。真夜中。これがグルリとまわることを「一日」っていうらしい。 そして一日が七回まわると、「一週間」。   わたしがこの家に来たときは、ちょうど「お盆休み」のすこしまえだったよう。ランもプも、 「お盆休み前でよかった。 ...

2022/2/7

猫小説『佐々木テンコ』第2章「わたしの不幸は、蜜の味」其の二

猫一匹拾っても、世界は変わらない。でもその猫と家族にとっての世界は、まったく違うものになる。実話を元にした猫小説、連載第3回。街をさまよっていた猫を招き入れた夫婦は、「この猫がどこから来たのか」謎を解くことに…。 ― まだ24時間も経っていないのに とかなんとか、優しげなことを言っていたランが、 「お風呂、用意できたよ~。手伝って」と向こうのほうで声を上げている。またプに、ひょいと抱き上げられてしまった。 「この子、体が大きいというか、シッポが大きいから、犬用のお風呂を買って正解だった」と話すランに、ぬる ...

2022/1/18

猫小説『佐々木テンコ』第2章「わたしの不幸は、蜜の味」其の一

猫一匹拾っても、世界は変わらない。でもその猫と家族にとっての世界は、まったく違うものになる。 実話を元にした猫小説、連載第2回。暑い暑い夏の夜、街をさまよっていた「わたし」は、ヨッパライの夫婦に家へ招き入れられ……。 家に入ってからも、足は自然と、よりヒンヤリしたほうへ向かっていく。つきあたった部屋はほんとうにヒンヤリしていて、すこし高くてひろびろとした場所には、世の中のすべてのヒンヤリを集めたかのような、テロンとした布がある。えいっと飛びのった。   なんという涼しさ! あんまりにも気もちよく ...

2022/1/7

新連載『佐々木テンコ』

猫一匹拾っても、世界は変わらない。でもその猫と家族にとっての世界は、まったく違うものになる。 猫の名は「テンコ」。実話を元にした猫小説、猫びよりプラス新連載スタート! 文・堀 晶代 写真・堀 晶代/カズノリ ほり・あきよ フリーライター。物心ついた頃からたくさんの猫たちと育つ。大阪市立大学生活科学部卒。2002年よりワイン取材で日仏往復生活を送るなか、母の「フランスの猫の写真を見たい」という思いつきのような言葉から、猫や猫をとりまく人たちの撮影や取材を開始。自著に『リアルワインガイド ブルゴーニュ』(集英 ...

2022/1/7

猫小説『佐々木テンコ』 第1章 「あつい あつい 夏の夜」

猫一匹拾っても、世界は変わらない。でもその猫と家族にとっての世界は、まったく違うものになる。 猫の名は「テンコ」。実話を元にした猫小説、猫びよりプラス新連載スタート! 暑い、とにかく、暑い。 いちばん暑いときって、見あげた空の色が黄色を通りこして、まっしろに見える。だからとにかく日陰をさがす。 日陰でずっとガマンしていたら、ようやくまっしろな空もすこしずつ青っぽく変わっていく。それを「夕方から夜へ」というのらしいのだけれど、そんなくり返しは、わたしがこの場所に来てからどれくらいあったのかなぁ。 ふぅ。 で ...

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