
小林社長には猫を引き寄せる魅力があるに違いない
手作りのキャットウォークが張り巡らされた中に、タワー、猫ベッド、猫コタツ、多数のクッションや爪とぎ、給餌器、トイレなどが溢れかえる。
猫部屋と思いきや、じつは社長室なのだという。隣の事務室のあちこちにも、書類入れならぬ猫のためのベッドが置かれている。
「保護猫社員7匹と人間社員で構成された会社です」と小林純矢社長が胸を張るのは、長野県安曇野市にある精密部品加工の株式会社シーケイテック。
猫たちはみんな、会社の敷地内にやってきた野良猫や知人から譲り受けた保護猫ばかりだ。

社員のみなさんも猫と仲良し。仕事中も猫と一緒
ことの始まりは2019年10月。敷地内に生後間もない猫がふらふらとやってきた。
明科工場団地の一角にある会社は、信濃の山々や清らかな犀川が近く、鴨や沢蟹、蛙、蛇などの生き物がたくさん生息している。
「猫の獲物が多く、工場で働く人間は夜には帰ってしまうし、野良猫には暮らしやすい環境なのでしょうね」と小林社長。

みんなのリーダー的存在、とーちゃん。頼りになる父猫だ
ただ、子猫には厳しい。「こんな小さな子猫、寒い冬を越えられないじゃん!」と、急遽キャットフードを購入。「与えてみるともぐもぐと美味しそうに食べ、社用トラックに住み着くようになったんです」。
ところが今度は、見知らぬ大きな猫がやってきた。
「子猫のゴハンを奪いにきたのだと警戒したのですが、なんと仲良さそうにするではありませんか。じつはこのふたり、親子だったんです。しかも母猫ではなくお父さん!」。
真っ黒でボロボロの猫を見て「守ってあげたい」という声が社員からもあがったため、事務室で飼うことにしたのだという。それが最初の2匹、「ぷーちゃん」「とーちゃん」である。

ぷーちゃんはどんな扉も開けてしまう天才猫。いつか窓も?
その後も新たに敷地内に現れた猫を保護したりして、現在は7匹の猫たちが事務室で自由気ままに暮らしている。猫がきてから社内のコミュニケーションも円滑になった。
「言いづらいことを言わなければならないときは、猫に向かって言うんです。猫を介して会話がなごやかになり、みんな癒やされています」。

ぷーちゃん(♂)、とーちゃん(♂)、えおん(♂)、斉藤さん(♂)、ばーこ(♀)、コモ(♀)、もつ鍋(♂)の
全猫社員が登場するオリジナルカレンダー
そして「猫のいる暮らし」は幸せなことを知ってもらいたいと、会社ぐるみで保護猫・地域猫活動の応援を始めた。「個人だとスペースや資金面などでなかなか難しい保護猫活動も、会社だとやりやすい気がします。
野良猫を保護することや避妊去勢手術、完全室内飼いに関しては、それぞれの考え方があるので一方的な押し付けはしたくありません。ただ、野良猫のことを広く知ってもらい、不幸な猫が1匹でも減る助けになれば嬉しいと考えています」
(文・写真 鈴木美紀)
Suzuki Miki
フリーライター。現在は三代目の猫「まふぃん」にかしずく日々。著書に『現代にゃん語の基礎知識』『花のある風景』。
小さなねこ図書館を開くのが夢。
株式会社シーケイテック
長野県安曇野市明科七貴6084-11 TEL 0263-31-5583
https://www.cktec.jp
Instagram:cktec_official