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神様・仏様・お猫様 神社仏閣の猫 第16回

本殿にたたずむさら

長野県の中央部を南北に走り、古来、上田・長野盆地と松本・諏訪盆地を分かつ交通の障壁となってきた筑摩山地。その峰々の一つ、修那羅峠の近くに、石神仏に囲まれた不思議な神社がある。1860年創建の修那羅山安宮神社だ。

猫がいると聞いて訪れたのはまだ雪深い2月の終わりのこと。人里離れて山中に分け入る道中は心細かったが、標高1037mの本殿に着くと、雪の中で仲良く遊ぶ3匹の猫に心が躍った。厳しい寒さに負けないどころか、冬を楽しむかのような様子に疲れが吹き飛んだ。

春になって再び神社を目指して山に入ると雪がなくなっていた。日中ならば薄着でも心地よいほどの陽気だ。杉並木の参道を抜けて階段を登り神社に着くと、猫たちが出迎えてくれた。

神社の開祖は、江戸時代最後の修験者・修那羅大天武。全国の霊場を巡って約60年修行し、この地で弟子たちとともに更なる修行を積み、人々の信仰を集めたという。没後は地域の人々に偲ばれ、彼を祀った現在の神社となった。

「いつしか鼠から蚕を守る養蚕の神として猫の石神仏が祀られるようになりました。正確な時期はわかりませんが、明治時代には猫神様が祀られていたのではないでしょうか」と、宮司の宮坂宗則さん。養蚕が盛んだった時代には、遠方からも多くの参拝客が訪れたという。

猫神様を探しに散策すると、境内に祀られた808基の石神仏群に圧倒され、その多様さに驚かされる。猫神様は丸みを帯びた可愛い姿をしていた。そして生きた猫も宮坂さんの先々代の時代にはすでに神社にいたとか。現在は、さら(オス)、とち(オス)、大福(メス)が暮らす。

大福は神社猫のボスのよう。他の2匹はその後を追いながら様子を見守る

雪の中、元気に動き回る大福

とちはさらと仲良しでいつも一緒に過ごしている

808基の石神仏は圧巻。神社と周辺の山中はパワースポットとして人気

遠くからさらの声がした。静かなのでよく聞こえる。行ってみると大福を追いかけていた。さらがしつこいと大福のパンチが飛ぶ。そんな2匹を眺めながらも我関せずのとち。

さらはさみしがり屋、とちはマイペースで大福はしっかり者と性格も三者三様だ。さらととちのケンカに大福が割って入って止めるところも見た。3匹の絶妙のバランスと、助け合って生きる日常が垣間見えた。

宮司の宮坂さんに抱っこされて安心しきった表情のさら。宮坂さんは昔から猫が大好き

社務所で昼寝をするさらと大福

帰り際に本殿でお参りをしていると、猫たちがすり寄ってきた。別れを惜しんで座って撫でると3匹が膝に上がってきた。なかなか帰らせてもらえず困っていたが、夕暮れには自ら寝床へ戻っていった。山を下りて神社が遠ざかるほど、猫好きの楽園に違いないという思いが強くなるのだった。

全国的にも珍しい駒猫。ネズミの天敵である猫を神格化するのは養蚕が盛んな地域ならでは

オートバイ神社として初めて認定された神社でもあり、ライダーたちの信仰も集める

修那羅山安宮神社
長野県東筑摩郡筑北村坂井眞田11572
TEL 0263-67-3810
Instagram:syonarayasumiya
Facebook:修那羅山安宮神社

小森正孝(写真・文)
1976年生まれ、愛知県一宮市出身。大阪芸術大学写真学科卒業。同大学副手として研究室勤務。現在フリーカメラマンとして猫撮影を中心に活動。写真集『ねころん』(株式会社KATZ)等。

HP:https://komorimasataka.com/home

 

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