小森正孝(写真・文) 京都の御所から南西に下った静かな山間にたたずむ十輪寺。850年に文徳天皇が皇后の安産を祈念したのが起こりで、平安時代前期を代表する歌人の一人、在原業平(ありわらのなりひら)が晩年を過ごしたと伝わるゆかりから「なりひら寺」とも呼ばれる。 応仁の乱で焼失した本堂を、江戸時代中期に再建した際に造営された庭園は、高廊下、なりひら御殿、茶室に囲まれ、場所と見方によって印象を変えることから「三方普感の庭」と呼ばれる。その高廊下から茶室を眺めると、サビ柄の猫が寝そべっていた。 「あの子は序音(じょ ...