里山の子、さっちゃん EP:8「さっちゃんの 夏休み」

さっちゃんのガールフレンドは、そうちゃん。夏休みになると、家族と一緒にキャンプ場に泊まりに来ます。

夏休みの里山は、のんびりムード。長平パパや麻里子ママは変わらずいそがしいけれど、犬猫たちは、思い思いに好きな場所でくつろいでいます。

カフェのテーブルの上で昼寝しているのは、かっちゃん。昼寝場所はその日によって違って、ピザを焼く窯の前だったりします。

ハッピーは、カフェの前の石段が好き。山からの涼しい風が通り抜けるし、お客さんが来たら、おやつをおねだりできるから。

山側の緑の木陰を散策しているのは、ライムちゃん。

かっちゃんは、デッキステージの脇にある大きな石の上が、ひんやりして気に入っていて、夏の間のクールベッドにしています。

今日は、遠くから、さっちゃんの友だちが来るんだって。

パパとママと一緒にロッジに着いたのは、キヨカさんリナさん姉妹と、そうちゃん。

さっちゃんと同じキジトラ猫ですが、さっちゃんより5歳年下の4歳。2年前の夏、キャンプ場に一家でやってきたのが、さっちゃんとの出会いでした。

そうちゃんも、さっちゃんと同じく、子猫の時に全身がマヒした状態で拾われました。さっちゃんのように四肢を突っぱることはありませんが、歩くことはできません。

そうちゃんには、てんかんの発作もあるので、毎朝毎晩薬を飲ませなければなりません。トイレの介助も必要です。トイレに行きたいとき、そうちゃんは家族にわかる合図を出します。

そんなわけで、キヨカさんの一家は、誰かが家に残ってそうちゃんの面倒を見ます。一家そろって出かけるときは、そうちゃんも連れて行きます。

キヨカさんのお父さんは、日頃からこんなことを言っているのですって。

「そうちゃんは、ふだん歩くこともできずに、家の中でじっとしているのだから、夏休みには、動物OKのところへどんどん連れて行って、いろんなものを見せてあげよう」

サッカーの応援にも、お花見にも同行します。

歩けないそうちゃんは、抱っこされて移動することに慣れているし、旅先で行方不明になることもありません。

この日は、2年ぶりの花はなの里訪問。来る途中、房総の海にも寄ってきました。初めて見る海。初めてかぐ濡れた砂の匂い。そうちゃんはうれしそうでした。

キヨカさんは、草の上で、さっちゃんの隣に、そっとそうちゃんを支えて立たせてやりました。

2年ぶりだったのに、そうちゃんはやさしくさっちゃんを舐めて、親愛の情を見せました。ちょっと照れるさっちゃん。

夏草の上で風に吹かれるふたり。さっちゃん、まだ照れてます。

行く先々で、そうちゃんを見て、「かわいそう」と、涙ぐむ人がいます。拾った時に、連れて行った獣医さんにもこう言われました。

「この子は、歩けないし、てんかんの発作もあるし、けっこうお金がかかりますよ。どうしますか」

その意味がわかって悲しかった、とキヨカさん。そうちゃんを家族にし、幸せにすると決めていたから。

いろんなところへ連れて行ってもらえるそうちゃん。ここでいろんな体験ができるさっちゃん。どっちも、ものすごく幸せな子です。

里山の子、さっちゃん
佐竹茉莉子・著

定価:1320円(税込)
単行本(ソフトカバー)
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写真と文:佐竹茉莉子

※犬猫たちの顔ぶれは、本書発行の2017年当時のものです。カフェは現在休業中。

 

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