ネコのとなりに [第12回]行列の卵炒飯(チャーハン)

ネコは身近な動物で、ヒトの社会の中で暮らしています。そのため野生動物とは異なり周囲の環境も含め、ヒトがいてネコは生きていけると思うのです。ヒトとヒトの間に繋がるいのち。今を生きる友達として向き合いながら、街の中にネコのいる風景が時代は変わってもあり続けてほしいと願うばかりです。

写真・文・イラスト平井佑之介

とある島を訪れた。島に渡航する1便の船は乗客や郵便物のほか、朝刊を乗せて運ぶので朝がとっても早い。

上陸すると、ここちよい潮風に吹かれながらネコが散り散りになって寝そべっている。白黒のぶちネコと仲良くなり、おでこの八の字模様を海苔に見立てて〝おむすび〟と名付けた。


▲額の模様で見分ける兄弟ネコ。右の八の字模様が“おむすび”

海鳥の声が聞こえたら、みんなの活動開始の合図。ぐっすり眠っていた彼らも縄張りを見回って、出逢ったら挨拶をする。ゆったり流れる島時間。

船員さんのお世話をしている島のお母さんはさらに早起きをしてゴハンの支度を始める。辺りに響く包丁の音や炒め物のいい匂いに釣られて店先にはネコたちが集まってきた。ドアノブについた紐をちょいちょいと触る仕草が、まるで食堂の開店を確認するノックに見える。


▲黒ネコが扉をコンコンコン

そわそわしながら扉の前に並んでいると、突然扉が開いた。ネコたちが一斉に駆け出すも、どうやら勘違い。お母さんがゴミ出しに出てきただけだった。

ネコが顔を揃えて、じーーーっと扉に張り付いている。すると扉が開き、お皿いっぱいの〝卵炒飯〟を持ったお母さんが登場。ここの看板メニューだ。


▲勢いに負けてはいけない


▲お母さんお手製の卵炒飯に釘付けのネコたち

待ちに待ったゴハンにネコたちの目も丸くなる。頭の上についた米粒に気付かないほど、夢中になってたいらげた。

「ネコもヒトも、ゴハンを食べるって大事なこと」と話す、お母さんの気持ちが温かい。

お礼に見えなくもない、〝ごちそーさんポーズ〟の毛づくろいに心が和らぐ。よく見ると離れたグループに 〝おむすび〟もいたようだ。


▲お礼代わりのごちそーさんポーズ

ところでネコはどうやってゴハンの場所と時間を知るのだろう。ネコの世界でも口コミがあって、「さっき、なかなかいい、食事処あったよ」と情報が交わされているのだろうか? 卵炒飯はネコの口コミで星いくつかな?

食事を終えたネコが散っていく。満腹になった〝おむすび〟は妹ネコにしがみついてうとうとしていた。妹は起きたそうにしているが、〝おむすび〟は離さないまま夢の中へ。


▲妹ネコの表情が物語る

作ってくれたヒトの顔が思い浮かぶ。元気が出るね、朝ゴハン。

 
Hirai Yunosuke
いきもの写真家。1988年生まれ。日経ナショナルジオグラフィック写真賞2015優秀賞。島や商店街で暮らす猫から、イルカやヘラジカなどの野生動物も撮影。『Nikon D800 ネコの撮り方』電子書籍出版。

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