ネコのとなりに [第6回] 〝パンダ〞と名付けられた猫

ネコは身近な動物で、ヒトの社会の中で暮らしています。そのため野生動物とは異なり周囲の環境も含め、ヒトがいてネコは生きていけると思うのです。ヒトとヒトの間に繋がるいのち。今を生きる友達として向き合いながら、街の中にネコのいる風景が時代は変わってもあり続けてほしいと願うばかりです。

写真・文・イラスト平井佑之介

名前

そのオスネコは貫禄のある風貌と白黒模様から〝パンダ〞と名付けられた。一目置かれる存在で、怒りっぽいネコでさえ親分肌の彼にはケンカを仕掛けることもない。皮膚に持病を持つ〝パンダ〞は、季節の変わり目によく自分で体を舐めて、傷を作ってしまう。


▲ずりずりと転がる“パンダ”

そんな彼を心配するように、目じりを下げた眼差しで見つめるネコがいる。第1回「ネコのとなりに」に登場したキジネコだ。親分を気遣う子分のように寄り添う。〝パル〞という名前が付いていた。

▲親分の後ろで安心する“パル”

そんなふたりを目の当たりにしたおじさんが〝パンダ〞を気遣い、後日薬を持ってきた。ネコは総じて、たくさんの名前を持つ。おじさんは〝パンダ〞を〝にゃーくん〞、〝パル〞を〝ハル〞と呼ぶ。

薬をごはんや水に溶いて飲ませる作戦に勘付いて、〝パンダ〞はプイと目をそらす。あれこれ作戦を練りながらどうにか薬を飲ませようと頑張るおじさん。

話題の中心が〝パンダ〞になると、〝ハル〞は少しその場を離れて見守る。〝パンダ〞がようやく薬を飲み終えると、〝ハル〞はおじさんの背中を追いかけ、「これからは僕の時間!」と言わんばかりにお腹を見せた。そして足を止めるおじさんの帰宅時刻がいつも延びてしまうのだ。


▲ふたり同時に撫でてもらう。不思議とおしりが上がる

ぴったりとくっついていた2匹がつかずはなれずの距離になった。離れたらまたどちらかが頭をコツンとぶつけにいく。ひまわりのように元気をくれる〝パンダ〟と、それを見つめるお日様のように優しい〝パル〟。住所は地球、無番地。ふたりのネコ生は街のどこかでぶつかり、いつしか歩調を合わせるようになった。


▲仲良しの証に足並みをそろえる

「にゃーくん、ハル。また明日ね。元気で出てくるんだよ。」と話すおじさんの帰る背中を見届けると、ふたりは足並み揃えて歩き出す。寝床への帰り道だろうか。

〝パル〟が3歩進むと〝パンダ〟は5歩で追いつく。〝パル〟は何度も歩みを止めては振り返り、まるで〝パンダ〟のもうひとつの名前を呼ぶように「にゃーあお」と鳴く。どこか名前を呼んでくれるだけで嬉しそう。今日もネコのとなりにいられてよかった。


▲冬のある日。となりにいればずっと暖かい


▲子分は親分の前で頑張る

Hirai Yunosuke
いきもの写真家。1988年生まれ。日経ナショナルジオグラフィック写真賞2015優秀賞。島や商店街で暮らすネコから、イルカやヘラジカなどの野生動物も撮影。ヒトと動物や自然が仲良く暮らせるきっかけになりたい。「今を生きる」いきものの姿を伝えたい。『NikonD800ネコの撮り方』電子書籍出版。LINEスタンプ「ネコのお便り」が好評発売中!

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