はじめての猫との暮らし方「猫に愛されるための10箇条」

猫と楽しく暮らすためには、まず猫にとってもあなたが最良のパートナーになることが大事です。猫を愛し、猫にも愛されるために必要な10箇条をまずは確認していきましょう。

1.猫の習性を知ろう

猫は生まれながらに狩りをする肉食動物です。そして、長い歴史の中で人と生活をともにしてきた家畜でもあります。猫の一番の魅力は、「人に寄り添いながらも家畜の中で最も野生動物に近いところ」ではないでしょうか。

猫が動くものに興味を示すのは、狩りをする習性の名残りで、それらは猫の野生モードにスイッチを入れる格好の標的なのです。「生まれながらのハンター」である彼らが一番喜ぶ遊びは、「狩りの疑似体験をさせてあげること」です。

そして、ひとりを好むのも猫ならではの特性です。集団で獲物を捕る犬と違って1匹で狩りをするネコ科の動物は、(群れで暮らすライオンを除いて)基本的に単独行動です。また、よく「猫は家につき、犬は人につく」といわれますが、これは猫が環境の変化を好まない動物だということをよく表しています。

「完全室内飼いはストレスが溜まるのでは?」と心配する人もいるかもしれませんが、猫は本来好奇心旺盛でありながら、同時に警戒心の強い動物でもあります。彼らにとって優先すべきは、「安心できるテリトリーに暮らせることと、エサに不自由しないこと」なのです。

2.猫が喜ぶ空間を作ろう

ポイントは、「上下運動ができること」「思いきり走り回れること」です。本来木に登ったり、屋根を自由に行き交ったりするのが猫。それを考えると、軒下も縁側もある家で自由に外にも行けて交通事故の心配が少なかった、いわば昭和初期の環境が彼らには最高だったのかもしれません。

しかし、集合住宅が密集し交通が発達した現代では、多くの飼い猫が狭い空間で暮らさざるをえなくなったのも事実です。だからこそ、飼い主である私たちが、室内に猫が喜ぶ空間作りを心がける必要があるのです。

3.猫の食生活に責任を持とう

かつて、猫たちは自由に外でネズミや鳥を捕って食べ、必要な栄養素を人間に頼る必要がありませんでした。しかし、今や口にできるものは飼い主が与えるものしか選択肢がなくなったことで、肥満や炭水化物の摂りすぎから来る糖尿病などの成人病、過去には起こりえなかった病気も増えてきているといいます。

つまり、食生活に関しても現代は猫にとって「受難の時代」といえるのかもしれません。愛猫の健康のためにも、良質なフードを見極める目を養いましょう。

4.猫が嬉しい距離感を知る

猫が猫らしく魅力的なのは犬のように「ただ褒めるだけでは満足してくれないところ」ではないでしょうか。猫に好かれたかったら、褒めるよりもまず「しつこくかまいすぎないこと」を心がけましょう。

「飼い主がボス」の犬と違って猫にボスは必要ありません。母子関係に似たものが根底にあるとは考えられますが、しいていえば、干渉し合わず適度な距離を保った「お隣さん」のような関係が猫たちには心地よいのだと思います。

5.猫を注意深く観察する目を持とう

そして、猫と暮らす上で特に大事にしたいのが「猫が発する病気のサインを見逃さないこと」です。

不適当な排尿行動や、水・食事の摂取量の変化などは、日常生活の中で常に観察することを心がけておけば、わずかな異変にも早い段階で気づくことができます。見るからに具合の悪そうな状態は、人間でいうと病気がかなり進行している重篤な状態です。

猫の病気は「早期発見・早期治療が鉄則」だということを忘れないようにしましょう。

6.信頼できるホームドクターと出会おう

医療で後悔を残さないためには「この先生になら愛猫の命を預けられる」と、最後は思えるかどうか……この信頼関係が非常に重要ではないでしょうか。

治療の選択をするのは猫ではなく人間です。その人間同士の相性が一番大きいともいえます。飼い主である私たちが信頼できるホームドクターとともに病気を理解し、愛猫を支えていく過程が充実したものであるならば、最後に後悔は残らないのではないでしょうか。

日本では医師が神聖視される傾向があるので治療方針になかなか意見を言いづらい雰囲気がありますが、飼い主も積極的に治療に参加することが大切なのです。

7.猫には猫の領域がある

私たちにとって猫は、そばにいてくれるだけで癒され、時に心の支えになってくれる大切な存在ですが、「猫はあくまで猫」です。

猫を何かの代替にするのは互いにとっても不幸なことではないでしょうか。ペットは家族であっても子どもではありません。人間の子どもだと思って10代で亡くなったら立ち直れないと思いませんか?しかし猫は15歳で人間でいう73歳、20歳を超えると90歳以上になり、彼らにとっては大往生なのです。

「人間と猫の時間は違う」ということを理解しましょう。その上で、互いに限られた時間の中で「いてくれて幸せ! だから頑張れる」。そんな喜びを共有できたら、猫も人も幸せになれるに違いありません。

8.最期は家族とともに

理想は「愛猫の死期を受け入れ、できることなら最期は家族とともに迎えさせてあげること」ではないでしょうか。

信頼するホームドクターとしっかり話し合った上で、もし医療で打てる手が無くなった場合には、最期はその子が暮らした家の大好きだった場所で、愛する家族に見守られながら逝かせてあげるのが、1つの幸せな見送り方といえるかもしれません。

愛猫の死期を知らないままでいることも、知った上で看取ることも、どちらも辛いことに変わりはありませんが、命を預かった者として死に向き合うことも愛情なのです。そして、猫も人も寿命はそれぞれです。その子の寿命を精一杯生きたことを認めてあげましょう。

一緒にいられた時間がどんなに短くても、「家族としてそこに存在してくれてありがとう」という気持ちを私たちが持ちつづけることが、猫も幸せなのではないでしょうか。生き物である以上、死は自然の摂理です。それを少し先に見せてくれるのが彼らなのです。

9.猫との「ご縁」を大事にしよう

そうやって、さまざまな出会いの中でまたご縁があった命を何代も何代も大事にしていく……それこそが素晴らしいことではないでしょうか。

今なお、身寄りの無い猫や殺処分される動物たちが後を絶ちません。もちろん、現実的に今すぐすべての命を助けることはできないかもしれませんが、その中でもご縁のあった猫を家族として迎えてあげてほしいと心から願います。

ネズミ駆除はもちろん、最近では自らが持つ能力で傷ついた人を癒すアニマルセラピーの分野で活躍する猫、家庭や地域で欠かせない潤滑油になっている猫たちもたくさんいます。「番猫」にはなれなくても、私たちが暮らす社会で猫たちの活躍の場は無限大なのです。

10.「キャットラバー」になろう

「キャットラバー」とは、「猫とともに暮らすことを人生の一部に組み込んでいる人」のことをいいます。珍しい柄や血統書が付いているからではなく、猫はありのままで素晴らしい存在です。

捨て猫や外で身寄り無く暮らすストリートキャットにも目を向け、殺処分される命を心から不憫に思って動物愛護の精神に基づいた猫との出会いができる人、そして私たちと猫が生きる社会の幸せを静かに願う人──それこそがキャットラバーなのではないでしょうか。猫は元来人の手で日本に持ち込まれた家畜で、野生には戻れません。

彼らは人に寄り添わずして生きていけない動物だということを改めて知ってほしいと思います。猫に愛されるためには、まずは猫を知り、猫の気持ちを汲み取ることから始めましょう。そしていつかは言葉を持たない猫や動物たちに優しい社会を作ることが、私たち人間に優しい社会を作ることにも繋がるのではないでしょうか。

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監修:南部美香
文・高橋美樹 イラスト・おかやまたかとし

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