今も賑わいを見せる戸越銀座商店街。下町情緒が残る街の中に、戸越八幡神社はある。大永6年(1526)、藪清水から現れた御神体を行永法師が京都の石清水八幡宮の御分霊と共に祀ったのが、創立の起源と伝わる。当時は今の戸越銀座駅近くに社があったが、170年程前に現在の地に遷座された。
早朝、多くの人が拝殿で一礼をし、職場や学校に行く姿があった。手水舎で神社のアイドル、三毛猫の「ミーちゃん」が出迎えてくれた。とても人懐っこく、初対面でも挨拶をすると返事をしてくれる。「おはよう」「ミャー」「天気がいいね」「ミャー」。参拝客の頬も自然と緩む。
他にも黒猫の「くろ」と「メグ」がいるが、人見知りな2匹はなかなか出てこない。社務所には犬のサダオ、クッキー、ミルキー、茶々丸もおり、時々外に出てくるので、猫派犬派問わず楽しませてくれる。
禰宜(ねぎ)の大石のりこさんによれば、もともと野良猫だったミーちゃんを神社で飼うようになると、彼女に会う目的で参拝に来る方が増え、神社の雰囲気も明るくなったという。「招き猫というのは本当にいるんですね。今では神社の守り猫です」と笑顔で語る。
「和を大切にする心や感謝の心、謙虚な気持ちや知足の精神、自然や命の大切さを神社に来て感じて頂ければと思います。言葉で何度もお伝えするよりも、猫や犬など動物に触れているうちに自然と気づかされることもあります。動物を思いやる気持ちには、すべての要素が含まれているのかもしれません」
境内にはカフェのような椅子があり、お茶を飲んだりミーちゃんと触れ合ったり、思い思いに過ごすことができる。そんな境内は居心地が良く、ミーちゃんと一緒に撮影をしているうちに、うたた寝してしまった。
夕方、ミーちゃんは参拝客に挨拶しながら散歩を始めた。くろやメグも姿を現した。そろそろゴハンの時間かな。
戸越八幡神社
東京都品川区戸越2-6-23
TEL03-3781-4186
https://togoshihachiman.jp
小森正孝(写真・文)
Masataka Komori 1976年生まれ、愛知県一宮市出身。大阪芸術大学写真学科卒業。同大学副手として研究室勤務。現在フリーカメラマンとして猫撮影を中心に活動。写真集『ねころん』(株式会社KATZ)等。WEBサイト「にゃんこマガジン」にて「小森正孝のスマホで猫写真」連載中。
https://nyanmaga.com