小熊香奈子さんは日展や画廊での展示などで作品を発表している日本画家で、愛猫を描いた絵はX(Twitter)でも話題を集めています。
愛猫のコイモちゃんは、毛並みも縞模様も見事なキジトラで容姿端麗。そんなコイモちゃんを描いた絵はリアルなだけでなく、猫好きのツボを絶妙に刺激する要素がたっぷりなのです。
香箱座りをしている猫は、背中と後ろ脚、お腹や胸のふくらみ、後頭部、そして全身のフォルムで私たちをほうけさせてくれます。あの丸みの魅力がこの絵には凝縮されているようです。
猫がゆったりとした姿勢でしゅっと長い四肢をのばす姿勢もきれい。脚を組んだり重ねたりする姿には色気すら漂います。ちょうどこの絵のように。背中のラインも猫ならではの曲線美。
そしてこのじっとり襖の隙間にあらわれるたたずまい。様子を窺っているのか、これからこちらに歩み寄る気なのか……。ずかずかと敷居を跨ぐのではなく、身がギリギリ通るぐらいの隙間から音もなく忍び寄ってくる、静かな身のこなしと存在感まで描き切っているよう。
小熊さんは猫の半開きの目が好きだと語っています。実際、まぶたが閉じていたり、うっすら開いている目を好んで描いています。こんな顔の愛猫を見て「なんて賢そうな顔でしょう。まるで古代の哲学者か禅僧みたいだわ!」と感激する猫好きは少なくないと思います。
どの絵からも愛の深さは感じられるのですが、それだけではここまで猫の魅力を描ききることはできません。それが小熊さんの写生を見るとはっきりわかります。毛繕いを観察した絵には何度も描きなおした形跡があります。神経を研ぎ澄まして、おそらく常人には考えられないような集中力で猫を観察した上で、どういう線を引けばその姿勢や動作の美しさが伝わるのか、その試行錯誤が垣間見えます。
画材の性質上、描き直しが難しい日本画。特に線が絵の命で、息を止めて引くこともあるとか。大好きな猫を納得いくように描くには、しっかりとした準備が必要なのでしょう。小熊さんの写生を見てから、作品を見直すと、猫と日本画の奥深さが同時に堪能できるようです。
画像提供:小熊香奈子
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