「ひとりぼっちのシロ」
たくさんの猫を飼ってらっしゃるお寺に白猫がいた。
彼女はいつも綺麗だった。
毛並みも良いし汚れもない。
いつも毛繕いしていた。
なぜかまわりの猫からは嫌われていた。
シロはいつもひとりぼっちだった。
他の猫に近づいただけでシャーっと威嚇されては悲しそうに毛繕いしてごまかすシロ。
餌を食べる順番はいつも最後。
他の猫が食べているのを遠くから見つめ自分の順番が来るのを待つ。
そんな時も毛繕いしていた。
けれど、流れ者のドラ猫がシロに恋をした。シロを追いかけまわしアタックする。
シロはどうしていいのかわからず逃げ回り、ちょっと隙があるとやっぱり毛繕いをしていた。
照れ隠しだろうか。
ドラ猫の恋が実ったかはわからないままいつしか姿を見なくなった。
シロは相変わらず毛繕い。
そして青天の霹靂。
シロは2匹の仔猫を出産した。そのうちの1匹はあのドラ猫そっくり!!恋は実っていたのだ。
毛繕いをする間も惜しんで仔猫を育てた。餌だって最後まで待たず他の猫と競って取りにいった。
母は強し。
やがてお寺の他の猫達も仔猫を受け入れ自然と皆で育てていった。シロとの距離感も少しずつ縮まっていった。
子が縮めた距離。
毛繕いをしてあげたりされたりの仲になった。仔猫たちも大きくなりやがてシロは虹の橋を渡った。
"ひとりぼっち"のシロはもういない。
text&photo/Kenta Yokoo