猫だって……「ワイルドを楽しみたい!」

牧場暮らしのネコ助くん。育ての親はドーベルマンで、馬も友達。日々、牧場を駆け回り、ワイルドさに磨きがかかります。

オレの名は、ネコ助。安直につけられた感じがしないでもないけど、恩人の父ちゃんと母ちゃんがつけた名前だし、自由猫のオレにぴったりの飄々とした名前かと、最近はそこそこ気に入っている。

今でこそ、「都会ではとんと見かけないワイルドな顔つき」とよく言われるオレだけど、3年半前には、「助けてよー。カラスが怖いよお」って、妹といっしょに弱々しく泣いてたチビだったんだ。

オレたち兄妹は、まだ目も開いてない頃、ビニール袋に入れられて、空き地の木の枝に吊るされ、捨てられた。カラスが集まってきたから、ブルブル震えてた。

近くの小道を馬に乗って通りかかったのが、母ちゃんだった。馬に乗った高さだったから、「ニー、ニー」ってかすかな声に気づいてもらえたんだ。

父ちゃんと母ちゃんは、近くで、3人の娘たちといっしょに開墾して作った牧場をやってた。オレたち兄妹は一家に面倒を見てもらって、命が助かった。子守りはジャクソンがしてくれた。

ジャクソンは、ドーベルマンなんだ。4年前に保健所経由で、ここにやってきたらしい。ニンゲンが好きで遊びたがりのジャクソンは、元の飼い主に「飛びつく、吠える」って理由で遺棄されたんだって。

父ちゃんと母ちゃんは、ジャクソンに愛情深くしつけをして、はしゃぎ気味だけど、誰にでもフレンドリーなやさしい犬に育てたんだ。

だから、オレたちのことも、舐めるように愛してくれたよ。オレが、親愛を込めて「ジャクソン」と呼び捨てにしても、怒らない。

妹はすぐにもらわれていって、今はお嬢様してるらしい。牧場に残ったオレは、ジャクソンといっしょに毎日車に乗って、自宅から牧場に通うんだ。

柵の陰でオレはジャクソンを待ち伏せして、足に噛みつく。「待てえ」と、ジャクソンが追いかけてくる。ガブガブガブと噛みまくるジャクソン。シャシャシャッと鋭い爪で応戦するオレ。舞う土ぼこり。とまあ、オレたちのレクリエーションは、こんなもんさ。ジャクソンは甘噛みで、オレのひっかきは寸止めだけどね。

チビの時から父ちゃんが馬に乗せてくれたから、乗馬も得意なんだ。

高い木に登るのもへっちゃらさ。オヤツにはそのへんのバッタやコオロギを食べる。

オレ、捨て猫だったせいか、食い意地張ってんだ。ジャクソンのご飯を盗み食いしてばかりいたら、獣医さんにダイエットしなさいと言われちまった。

夜中に、食卓の上にあった袋入りの食べ物を片っ端から落として、ジャクソンの牙で噛みちぎってもらい、いっしょに全部食べたことがあった。あん時は、罰で、朝ごはんはふたりとも抜きだった……。

牧場の周りは、原っぱや畑や雑木林があって、ひとりで毎日冒険に出かける。ジャクソンは、誘っても牧場からは出ないんだ。

冒険に夢中になって、家に帰る時間に気づかなくて、牧場に置いてけぼりになっちゃうこともあるんだ。次の朝は「なんで置いてくんだよう」って、父さんたちに甘えまくっちゃうけどね。

こないだ、父さんたちが話してた。ジャクソンの体に「シュヨウ」が見つかったんだって。「いいシュヨウ」は手術でとったけど、また「悪いシュヨウ」が見つかって、もう手術はしないで、ジャクソンの今の元気が少しでも長く続くように暮らさせる、って。

ジャクソン、まだまだいっしょにワイルドを楽しもう。もうご飯を横取りしたりしないから、ずっとずっと、オレたち、ワイルド・コンビでいようぜ。約束だよ。

猫だって……。
佐竹茉莉子・著

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※このエピソードは、本が発行された2018年当時のものです

写真と文:佐竹茉莉子

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