宮下ひろこ・文
たまゑ・イラスト
キャリーバッグのカスタマイズから
動物病院の待合室はさまざまな動物の声やにおいがするし、知らない人間もいてビビりさんにはストレスフルですよね。最近では待合スペースを犬猫で分けているところも増えてきましたが、それでも敏感な動物たちは存在を感じ合うので、いつもとちがう場所に連れてこられたというだけでも相当怖いものです。
緩和できる措置としては、事情を話して診察の順番が来るまで車などパーソナルな場所を確保したり、狭い空間で落ち着く子もいるので、大きめのバスタオルやブランケットなどでキャリーバッグをおおって、外部の音や光をある程度遮断したりしてみるのもよいでしょう。
キャリーバッグの中に飼い主さんのにおいがついたタオルやおもちゃを入れて、自宅でも日頃から自由に出入りできるようにして、嫌な場所ではないと覚えてもらう方法もあります。
猫のキャリーバッグは、上が開くタイプのものがおすすめ。扉が横にしか付いていないと、診察の際に奥から引っ張り出さないといけないので怖がりな猫にはストレスになります。また、点滴や注射の際、簡単な保定の役割をはたす場合も。
音に敏感な場合は、キャリーバッグの取っ手の部分にリボンなどを巻いて、運ぶときにパタンと音が鳴らないようにしている飼い主さんもいます。
診察後に、大好物のおやつをキャリーバッグの隙間からあげたり、声をかけたりしている人もよく見かけます。飼い主さんがそばにいてくれるだけで安心なのです。
何かと役立つ洗濯ネット
お出かけする際に、猫さんを洗濯ネットなどの袋に入れてきてくれる人もいます。怖がり猫さんの場合、事前にある程度慣れてもらうとよいですね。メッシュ状の袋の中は、意外に安心できる場所。ほどよく周りも見えて、体にやわらかくフィットすることも好まれるようです。日頃から自宅で、ネットの上に乗ったらおやつをあげたりして、入る練習をしておくのもよいかもしれません。
新品の洗濯ネットの場合、糊が効いているので一度素洗いをするとよいでしょう。それでも固いタイプは、塩素系の漂白剤にしばらくつけておくことでやわらかくなる場合も。使う前ににおいがなくなるまで洗いましょう。
猫を落ち着かせるフェロモン製剤
そのほかの対策として、猫を安心させたりストレスを緩和させたりしたいときなどに使用されるフェロモン製剤があります。待合室や診察室などに拡散器を設置している動物病院もあるので見たことがあるかもしれません。フェロモンは動物や虫の体から分泌される化学物質で、同種間のコミュニケーションに用いられます。猫特有のフェイシャルフェロモンなので人間にはわかりませんが、安心やリラックスの効果が期待できます。
拡散タイプとスプレータイプがあり、事前にキャリーバッグやタオル、移動用の車内などにふりかけておくことで、待合室での怖さを軽減することが期待できます。ただし効果は個体差があるようなので、まずは試してみて、長期的に様子を見ていくことをおすすめします。スプレー行為や粗相にも効果が期待できるといわれています。
バスタオル作戦
いざ診察室に入っても、まだまだ怖い猫さん。診察まではキャリーバッグの中にいさせてもらうよう頼んでみましょう。診察台の上では、バスタオルやブランケットをかけて視界を遮ることで恐怖心を抑えられることもあるので、試してみてはいかがでしょう。
猫にも抗不安薬や睡眠薬
極度に怖がりな子の場合は、抗不安薬を処方してもらい、事前に投薬してから来院してもらうこともあります。まれなケースではありますが、動物にとっては精神的負担が減るので、獣医師に相談してみるとよいでしょう。
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