もう8年も前、2016年に本誌86号のCNN(キャット・ニュース・ネットワーク)で、コルシカ島の猫について書いたことがある。イタリア半島の西、地中海に位置するこの島をフランス人は「コルス」と呼ぶ。皇帝ナポレオン1世の生誕地でもあり、船でコルスへ近づくにつれて、灌木林の香りや光の強さが増す。船上で見も知らぬ人たちとは「ああ、コルスの香りや光が濃くなってくる。この地に還る感覚はいつも通りだ」と話す。 筆者にとってコルスは故郷ではない。だがワインライターとしてその地にしかない固有性を知る方法のいくつかは香りや光 ...