『ねことじいちゃん』や『おじさまと猫』など、近頃は「男性と猫」を扱った作品が出てきた。
ちょっと驚きだ。一昔前なら「かわいいニャー」とか言いながら猫に近づいていく大人の男がいたら変な目で見られてただろう。
自分はやってたけど。(ちなみに学校の休憩時間に『猫の手帖』を愛読してた。教室内の反応は想像にお任せする)
女性は普通の猫好きから餌やりおばさん(善か悪かはここでは触れない)まで幅広くいた。
だけど二十年近く猫と関わってきたなかで「ねこおじさん」は確実にいた、息を潜めて。
たとえば昼休みの公園。ねことおじさんは密会する。
おじさんがベンチに座った。すると左右から猫がノソリノソリと歩いてきて…おじさんの膝に飛び乗る。
別に餌をあげるでもない。猫も求めてこない。ただただ背中を撫でたり膝の上に置いたり…あたりを気にしながら。
決して猫は尻尾を立てて歓迎する訳でもなく無我夢中で駆け寄る訳でもなく、淡々と。
2匹の猫はおじさんの膝で時を過ごす。おじさんもまたボーッとしているだけだ。そして昼休みが終わる頃、各々去っていく。
たとえば街角で。白猫がどこかへ向かっていた、が、一旦立ち止まり後ろを振り返る。
すると「あっ!」という顔をして踵を返す。
僕の横を通り過ぎてテクテク歩いていく。その先には…自転車に乗ったおじさん。
おじさんは自転車をとめて白猫のもとへ。撫でたり目ヤニをとったり…。往来のある街角なのでその間3分程度だったろうか。
「じゃあまたな」「うん、おじさん」
と言葉を交わすように違う方向へ去っていった一人と一匹。
僕はなにか尊いものを見た気がして目頭が熱くなった。
密な関係では無い分、なにか対等な立場で接し合っている気がした。
職人の相棒猫、昼の弁当を分けるサラリーマン、口パクで会話を交わす大工さん…。
なんだろう、この関係。いうなれば「無償の愛」か。…書いてて恥ずかしくなってしまうが。
「ねこおじさん」は神出鬼没なのだ。
【横尾健太】Yokoo Kenta
Twitter 猫島警部 @nekojimakeibu
熊本市在住。1999年より細々と猫写真を撮り始めて今では太々と猫に浸かる。2016年熊本地震で被災、一時的に東京へ避難。その先で様々な人と猫に癒されお世話になる。「ネコまる大賞」「猫の手帖キャネット大賞」「よみうり写真大賞ファミリー部門季節賞」受賞。使用機材:通常はニコンのD800、旅先はペンタックスのKP、夏はニコンのnikon1 J5。でも機材にこだわりはありません。
プロとはそれで生活できる人だと思うので、アマです。なにもかも脇が甘い性格。写真におけるスタンスは皆無です。猫さまを見ると興奮して「あ、あ、あ」となり何も考えずにシャッター切ってます。「猫を使って金儲け」よりも「金を使って猫儲け」したいな。いろんな猫に出会いたいです。