本堂前の常香炉の下で参拝客を迎えるシャア
行円上人が寛弘元年に開基した「天台宗 革堂行願寺」は、千年以上の歴史を持つ。元々は一条通りにあったが、天災や戦乱等で移転を繰り返し、江戸時代に現在の場所へ移り替わった。ご本尊「十一面千手千眼観世音菩薩」が祀られ、西国三十三所観音霊場の一つでもあるので、多くの参拝客で賑わっている。
『徒然草』第八九段の「猫また」の談に行願寺が登場することを知る。古よりの猫とのゆかりに思いを馳せながら境内に入ると、所々で猫が出迎えてくれた。
百体地蔵堂の前に立つボス。まるでお地蔵様を守る衛士のようだ
副住職の中島恵海さんにお話をきく。「犬派だった住職が、6年程前に三毛猫のチビを飼い始めて猫も好きになりました。それ以降、外の猫が寄り付くようになって、今は10匹程の猫が住みついています」。寺院として公認しているのは、チビの子で三毛猫のタマ(6歳♀)だけだが、他の猫も自由猫として見守っている。
「ネズミがよくお供え物を食べていたのですが、猫が来て少なくなりました」と、恵海さん。「ただ、千手観音菩薩様は子年の守り仏なので申し訳ない」と苦笑しながら、こう続けた。「仏教に『山川草木悉有仏性』という言葉があります。全てのものは仏の現れであり、一つ一つがかけがえのない存在です。それらが組み合わされると、より一層かけがえのないものとなるという考えです。
命は人も猫もほかの動物もみな平等であり、生きていく同志だと私は考えています」。
夕刻、住職の中島光海さんと恵海さんが外に出てくると、どこからか猫たちが集まってきた。門が閉まると境内は彼らの世界だ。つい覗きたくなる気持ちを抑えて、行願寺を後にした。
左からラブ、シャア、まろ。明日の天気でも気にしているのかな?
各々境内の過ごしやすい場所を見つけて寝たりじゃれ合ったりしている
「昔から猫や犬など、いつも何かしらの生き物と生活していました」と恵海さん
最近は猫好きの参拝客も多いそうだ
子年の守り仏、新年のお参りにおいでやす
大日堂の祠の前のタマ。愛嬌のある容姿に美しい瞳が印象的
夏に見頃を迎える蓮の花も、お猫様にとってはオモチャに過ぎない
天台宗 革堂行願寺
京都府京都市中京区寺町通竹屋町上ル
行願寺門前町17 TEL 075-211-2770
小森正孝(写真・文)
Masataka Komori 1976年生まれ、愛知県一宮市出身。大阪芸術大学写真学科卒業。同大学副手として研究室勤務。現在フリーカメラマンとして猫撮影を中心に活動。写真集『ねころん』(株式会社KATZ)等。WEBサイト「にゃんこマガジン」にて「小森正孝のスマホで猫写真」連載中。
https://nyanmaga.com