琵琶湖の北西にあり、天台寺門宗の総本山で園城寺は、天智・天武・持統各天皇の産湯を汲んだ「御井(三井)」にちなみ三井寺と呼ばれる。境内には国宝の金堂をはじめ、徳川家康が寄進したと伝わる重要文化財の三重塔、近江八景と呼ばれる三井の晩鐘など、歴史ある文化財が建ち並ぶ。最近では朝ドラ「おちょやん」など多くのドラマや映画のロケ地にも使われ、桜や紅葉も美しく大勢の人が訪れている。
昨年は中止された春のライトアップも今年は開催されるとあり、桜の時季に散策した。西国十四番札所観音堂がある観月舞台には、映えスポットが作られ実に美しい眺め。一昨年夏からは境内を妖怪がうろつく肝試しイベント「妖怪ナイト」が行われたり、観音堂書院にて絵本展などを開催。Facebookでは三井寺広報僧として、マスコットキャラター「べんべん」が楽しく季節の移ろいなどをアップしている。
色々と新しい試みがされるのも、若い世代である住職のご子息、福家俊孝さん(35歳)が執事を務めているからだ。俊孝さんのInstagramでは、飼い猫やお寺の猫についても時々更新してくれている。
そんな名所古刹の広大な境内では、ふと視線を感じると、緑豊かな場所に神々しい姿で猫が佇んでいたりする。お寺の皆で世話をしており、猫の呼び名もクロロ、おシロさん、トラちゃんと各々好きな呼び方をしているそうだ。TNR※も捕獲できる猫から行っている。
受付の女性が「犬好きだったけど、オヤツを持ってミイちゃんと呼ぶと来てくれるのが嬉しくて猫好きになりました」と教えてくれた。僧坊を改築したお茶処の店員さんも「朝出勤すると、猫たちが喜んで一緒に歩いてくれたりするの」と、目を細めて愛おしそうに話していた。
福家住職の家にも完全室内飼いの元保護猫がいて、家族全員が猫好き。敷地内には、他の猫と接しないように病気の猫を保護している猫ハウスもあった。
威風堂々とした寺宝のある名園まで猫がひょっこり現れることもあるが、基本的に寺の外猫たちはある程度の距離までは許しても、一定間隔のソーシャルディスタンスを保つ。もし境内で猫たちに出会っても、怖がらせないように安心できる距離を守ってあげよう。 (写真・文 原田佐登美)
※ TNR = 野良猫を捕獲( T r a p )し、不妊手術を施したうえで( N e u t e r )元の場所に戻し(Return)、1代限りの命を地域で見守る地域猫活動の一環。
三井寺(天台寺門宗総本山園城寺)
滋賀県大津市園城寺町246
TEL 077-522-2238
http://www.shiga-miidera.or.jp
Facebook:@benbenofficial
Instagram:to4taka26
Harada Satomi
愛知県在住で保護猫3匹と暮らす。著書に、世界の猫写真と紀行漫画で綴る単行本『猫にまたタビ』( 辰巳出版)。日本写真家協会会員。