「猫は人につく」
下町の商店街のはずれにある小さな公園。
買い物を終えた人が休憩にやってくる。
そこにそれはそれはかわいい三毛猫がいた。
人慣れしてて子供にも優しい。
理想の猫だ。
特にミケちゃんを可愛がっているおばあさんがいた。
毎日やってきてはご飯をあげ公園を掃除する。
孫娘のようなもんだよ、そう言って愛おしそうにミケちゃんを抱きしめる。
大雨の日、さすがに今日はおばあさん来てないだろうな、と思っていたらいつも通りに公園にいた。
そんな微笑ましい関係がしばらく続いた。
そして数年が経った。
ある日、おばあさんが亡くなったという訃報を知った。
つい先日まで公園に居たのに…。
皆、ミケちゃんの事を思い浮かべたのだろう、自然と公園に集まった。
ミケちゃんは…。
するとどうだろう、ミケちゃんはいなくなった。
どこを探しても彼女はいない。
何ヶ月か探しただろうか。
張り紙もして探したが一向に見つからない。
結局、最後まで行方は知れなかった。
僕は思う。
猫は家につく、というがミケちゃんは人についていたのだ。
おばあさんを心底慕っていたのだ。
その後、ミケちゃんの姿を見た者はいない。
あの美しい三色の毛並みを思い出す度におばあさんの笑顔も思い出す。
text&photo/Yokoo Kenta