里山の子、さっちゃん EP:1「さっちゃんの1日」

この本に登場するさっちゃんたち17匹の猫と、ハッピーたち7匹の犬が暮らしているのは、千葉県の房総半島の真ん中あたり。

広い空。

吹き抜ける風。

里山の原風景を彩る季節季節の草花。

朝は、ニワトリが鳴き、夕べには、薪をくべる風呂焚きの煙がたなびきます。

 

さっちゃんおはよう。

朝ですよ。

良く晴れて、気持ちのいい一日になりそう。

朝ごはんの後、麻里子ママが猫小屋の戸を開けると、猫たちはいっせいに外に飛び出していきました。

隣のおばあちゃんがもう畑仕事に精をだしています。猫たちが畑で遊んでも、おばあちゃんは「これ」としか叱りません。

みんなが里山に思い思いに散ったあと、さっちゃんはママにベッドから抱き下ろしてもらい、専用のスロープで外へ向かいます。

生まれたてのバンビのように足を突っ張って、ぐらぐらと。

遠くから、ゴローくんがさっちゃんを見つけました。

かけ寄ってうれしそうにスリスリしたとたん、さっちゃんはバタン!と倒れてしましました。

「なんで、さっちゃんはすぐに倒れちゃうんだ?」と不思議そうなゴローくん。

キャンプ場の方はきれいな青い空が広がっています。

ゆるい山道を、ぐらつく足を一歩一歩踏みしめて登っていくさっちゃん。

猫小屋も畑も池も見渡せるここが、猫たちのお気に入りの場所。さっちゃんの前になり後ろになって、ゴローくんが付き添っています。登ってきたさっちゃんをライムちゃんが舐めて迎えてくれました。

いつのまにかさっちゃんの周りに仲間たちが集まって、まるで遠足のよう。

さっちゃんは青い空の下が好き。草の上が好き。

雨の匂いが残る草の匂いをそっとかぎます。

池のそばでかっちゃんが背伸びをしています。

ひなたぼっこをしているのは、「灰かぶり猫」のユズちゃん。

柿の木に登っているのはウメちゃんです。

麻里子ママが心配して探しにきました。さっちゃんは溝などに落ちたら、自分では這い上がれないからです。だから、たいてい、ママの目の届くところにいます。

「デッキでひなたぼっこしてようね」と、麻里子ママ。

遠くからカフェに来たお客さんがさっちゃんにおやつを持ってきました。

「今日はさっちゃんに会えてよかったよ」と頭をなでていきました。

ウッドデッキの女の子が、さっちゃんと遊びたそうにしていたので、麻里子ママがさっちゃんを連れていきました。

「足、大丈夫?」と、女の子は心配してくれました。

マナカナ兄弟の妹カナちゃんはハチに刺されて顔が腫れています。お兄ちゃんのマナくんはあんなところで転がっています。

「サチ、トイレ行っとこうか」と麻里子ママ。さっちゃんは大きな猫トイレで横になって踏ん張ります。

「がんばれ、がんばれ」と身を乗り出し応援するゴローくん。

いいウンチが出て、麻里子ママもホッとしました。

洗濯物がよく乾きました。

畑の穴掘りに夢中になっているのはヒロミちゃん。

コスモスの道に夕日が差し始めます。

カフェの最後のお客様が帰って、ココちゃんは大あくび。

ライムちゃんは、小高い場所から、夕ご飯の合図を待っています。

「ゴハンよ~」という麻里子ママの声で、猫たちは我先に猫小屋にかけこみ、点呼して、小屋のカギはかけられます。

その頃、さっちゃんは、カフェの薪ストーブのそば。

体温調節がうまくできず、寒さが大敵なのです。

さっちゃんをそっとマッサージしてあげているのは、マナカナ兄妹の母親、ハッピー母さん。ハッピー母さんは、猫が大好きで、とくに子猫やさっちゃんの面倒を見ずにはいられません。

「ハッピー、キャンプ場の片づけをしてくる間、サチのこと、お願いね」という麻里子ママの言いつけを喜んで守っています。

さっちゃんの寝姿は、まるで子猫のよう。

一日中いそがしく働いていた麻里子ママ。

さっちゃんが今日も元気でいてくれて、安心して腕の中で甘えてくれて、一日の疲れがすーっと消えていくようです。

さぁ、さっちゃん、仲間が待っている猫小屋に戻ろうね。

あったかい毛布にもぐりこんで、明日の朝までぐっすりお休み。満点の星の下の里山で。

明日もいい日になりますように。

里山の子、さっちゃん
佐竹茉莉子・著

定価:1320円(税込)
単行本(ソフトカバー)
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写真と文:佐竹茉莉子

※犬猫たちの顔ぶれは、本書発行の2017年当時のものです。カフェは現在休業中。

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