文・写真 小森正孝 神話の時代、荒海の龍神が大暴れして人びとが住めなかった土地があった。困った神々が中国から招いた文殊菩薩は、1000年にわたる説法で龍神を改心させ、人びとを守る神になると誓わせた。平和が訪れた海に文殊菩薩が如意を浮かべると浮橋になり、そこに龍神が土を置くと島になり、さらに天女が松を植えた。これが天橋立のなりたちだと『九世戸縁起(くぜとえんぎ)』は伝えている。 この古文書が伝わる智恩寺は、北側に天橋立と丹後半島を望む岸に境内を構える。904年の創建以前から神聖な土地とされており、水墨画家・ ...