山門に向かうと、ネコビエ像が見えてきた。さらに行くと、驚く数の猫の彫刻が出迎えてくれた。雲林寺開教の年は定かでないが、創建した和尚の没後約400年になる。萩と猫には古くから縁があり、毛利家文書の中にもご法度として猫について書かれたものがあるらしい。また、城下町には「猫ノ丁」と呼ばれる界隈があり、毛利輝元の家臣長井元房と猫にまつわる伝説が残されている。
住職の角田慈成さんにお話を伺う。ネコビエ像は山口市在住のチェーンソーアート作家・林隆雄さんから寄贈された。ネコビエ像の写真を待ち受け画面にしてお守り代わりにする人もいるそうだ。境内や本堂の中にある猫の彫刻や置き物も寄贈されたもので、おそらく千体を超える。コロナ禍の3月には約100体の彫刻にマスクをつけSNS投稿すると「いつかマスク猫を見に行きたい」等の声が寄せられたという。
「猫を好きになったのは、広島県の本山佛通寺で修行をしていた時、空き箱に入った目も開かない子猫を拾ったのがきっかけでした」と角田住職。「冬は懐に入れ温め、筆先にミルクをつけ飲ませて育てました」。そして「ブー」と名づけられたその猫は、実家で暮らすこととなった。「雲林寺に来る少し前に亡くなりましたが、人懐っこく忠義な猫でした。その後も猫との縁が多く、今はアウアウ、クロマメ、タビ、シマの4匹がいます。境内には近所の猫も遊びにきますよ」。
今は〝猫の距離感〟が大切だと言う。「近年、猫の魅力が見直されています。行動が流動的で、一定の距離感を保ちつつ、落ち込んでいるといつの間にか寄り添ってくれるような猫の愛情表現に、人々が気づいたのでしょう。このような〝猫の距離感〟が特に今は求められているのではないでしょうか」。
階段を下りて山門を見上げると、ネコビエ像が見送ってくれた。マスクから解放されたら、また遊びに行こう。
臨済宗南禅寺派 雲林寺
山口県萩市大字吉部上2489
TEL 08388-6-0307
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Twitter:@nekoma40
※1/10現在本堂は拝観中止。HPやFacebookで最新情報を確認してから参拝に訪れてください
小森正孝(写真・文)
Masataka Komori 1976年生まれ、愛知県一宮市出身。大阪芸術大学写真学科卒業。同大学副手として研究室勤務。現在フリーカメラマンとして猫撮影を中心に活動。写真集『ねころん』(株式会社KATZ)等。WEBサイト「にゃんこマガジン」にて「小森正孝のスマホで猫写真」連載中。
https://nyanmaga.com