/20133/
本誌にも度々登場し、熱い食欲を込めて食べ物を見つめる姿がおなじみのがんも(12歳♂)。食とは生きることであり、欲しがることは尊厳であるかのよう。その食いしん坊ぶりを飼い主のMARCOさんに語っていただきました。
文・写真 MARCO
食欲は衰え知らず
いつも家族の食卓にやってきては食べ物を物欲しそうに眺めているがんも。もともとは、テーブルに跳び乗りたいのにジャンプが
苦手で失敗しがちなので、食卓のへりにしがみついて「食べたい!」と訴えるようになったのがはじまりでした。ありったけの未練と食欲を全身で表現しながら。
そんながんもは今年で13歳になります。ジャンプはますます苦手になりましたが、食欲は相変わらず旺盛です。むしろ、ご馳走へのまなざしも「欲しい!」という気持ちも、いっそう強くなったのではと思うことすらあるほどです。
例えば、椅子が良い位置にあれば、すかさずそこを経由して食卓に登頂するようになりました。足りないものを知恵と経験で補
おうとしているかのよう。そんな成長が嬉しくてついつい「進化した! 賢くなった!」と褒めちぎってしまいます。すると、がん
もばかりか同居猫たちも調子に乗ってしまい、ダイニングテーブルが無法地帯と化すのでした。
がんもは12年前に、母猫のおもち(14歳♀)とともに多頭飼育崩壊の家からレスキューされた猫です。保護主から引き取った当時はいつも怯(おび)えていて、なかなかゴハンを食べてくれませんでした。人目があると食べられないことに気づいて食事を見ないようにしていたら、少しずつ食べるように。そして半年以上経ったある日、ダイニングテーブルに就いた私の隣で卓上を覗いていたのです。
あの時は、がんもとの距離が縮まったような気がして本当に嬉しかったです。どうやら一旦心を開くとグイグイくるタイプだったようで、その後は、今までの分を取り戻すかのような食欲を発揮。びっくりするほどの食いしん坊になりました。
全力で食べる!
がんもは小さなことを気にせず、豪快に食べるスタイルです。お皿にカリカリを入れて出されれば顔を突っ込み、鼻息荒くガツガツ食べます。半分以上外に出てしまうので、以前は同居猫のちくわが横でコツコツ拾い食いしてくれたものでした。
好物を前にすれば、上下にぴょんぴょん、左右にウロウロ、前足チョイチョイと忙(せわ)しなく躍動。その姿は、まるで歌川国芳が浮世絵に描いた踊る猫みたい。
さらには人間の食べ物すら口元に引き寄せようと、全力で前足を伸ばしてチョイチョイします。もちろんいくら頑張っても食べ物には届いていません。なのに伸ばした前足を口に持っていって味見をするのです。何も味はしないはずなのに、満足気な顔をするのが不思議です。
でも、今も内弁慶な小心者のままなので、来客や物音などで食欲は雲散してしまいます。おそらく、がんもが食い意地を張れるのは、リラックスしているからであり、がんもが自分らしく生きている証(あかし)でもあるのでしょう。
これからも食欲旺盛で豪快に撒き散らしながらカリカリを平らげつづけてほしい。心ゆくまでスイーツやサツマイモを目で味わってほしい。がんもが変わらずがんもらしく食いしん坊でいられるように、愛情を込めてお世話させてもらいます!