画家・高根沢晋也さんは、オーストリアに留学してウィーン幻想派の巨匠・ヴォルフガング・フッターに師事した経歴の持ち主で、ルネサンス絵画の技術を駆使する古典技法のスペシャリストです。
古典をリスペクトしながらも作品は現代的。そして好んで猫を描くことで知られています。そんな高根沢さんの個展が東京・銀座のギャラリー一枚の繪」で開催されたのですが、やはり猫がいっぱいです。
高根沢さんが描く猫の特徴はまずコスプレ。多くの猫がきらびやかな作品世界に相応しい衣服に身を包んでいるのです。例えば「縞姉妹」という作品では、ルネサンス貴族のような装束に身を包んだ猫が登場します。
かと思えば「招福猫七福神図」のように、日本と中世ヨーロッパとヘヴィメタの美学が合体したような無国籍の世界観で、衣装・小道具のバリエーションが面白い絵もあります。
もう一つの特徴は猫の描き方がリアルで愛に溢れていること。毛並み、柄、豊かな表情、時に力強くて野性的で鋭い眼光がいきいきと描かれています。そういう猫本来の魅力をおさえながらも、とてもかわいい。加えて1匹1匹が個性的で、骨格や顔つきを描き分けているのです。
カタログのみの掲載でしたが「春の神話」も印象的でした。眩いばかりの金箔、テンペラ絵画の繊細さな描写と鮮やかな色彩、神と思しき人物と幻獣などが圧倒的に美しいのです。
それでいて画面右下には猫が乗ったトロッコ列車が走り、画面中央の猫たちは力強い眼差しでこちらを凝視してきます。この2匹、衣装が現代的で描き方は立体的。実はこの絵の主役ではないかと思ったほどのVIP待遇です。これはかなり気合いの入った猫好きだとお見受けしました。
高根沢晋也展―千億年の夢―
銀座 ギャラリー一枚の繪(東京)2023年10月16日~28日
https://ichimainoe.co.jp
※ 現在、大阪・梅田のワイ アートギャラリーで、高根沢さんが参加するグループ展が開催中です(3月16日まで)