2018年11月、名古屋の東山動植物園近くにオープンした「保護猫カフェ笑猫」は古民家の一軒家。玄関前のウェルカムルームで受付した後、縁側がある和室へ。陽の当たる庭を眺めながら、保護猫とまったり過ごすことができる。ここで、現在約20匹のスタッフ猫たちが暮らしている。
オーナーの〝笑猫かぁさん〟こと石原恵美子さんは、肺炎・くも膜下出血・発作性心房細動と3度の大病を患ったが、いつも寄り添ってくれた猫がいたという。「残された人生で猫に恩返ししたい」と保護猫カフェを始めることを決意したそうだ。
カフェの開店にあたり「リーダー的な賢い猫をまず引き取りたい」と名古屋市動物愛護センターに希望を出したところ、黒猫の福君(6歳オス)を勧められ譲り受けた。福店長は期待通り、後から来た猫たちの面倒を見てくれて、率先してお客さんに甘えてくれる。
猫たちがのびのび個性を発揮できるように、閉店後は人馴れトレーニングをしている石原さん。名前を読んで話しかけ、触ってコンディションを確かめ、人相ならぬニャン相が良くなるよう愛情をかけて毎日行っている。
「猫も心が落ち着き人を好きになると、優しい顔になるのよ」。愛情表現を返してくれる猫たちがたまらなく可愛いそうだ。
管理している外猫の世話やTNR※も行っているが、時には心無い人から嫌がらせを受けたことも。それでもボランティアスタッフ約10名と励まし合い、常連スタッフさんと〝笑猫会〟という集まりを開催し、支え合う人同士でまったりと過ごす時が活力となっているそうだ。
「1匹里親さんが決まれば、動物愛護センターに1匹助けに行ける。送り出す時はちょっと寂しいけれど、また新しい命を繋げられることが嬉しい」と明るく笑う石原さん。
取材時、猫を飼ったことがないという女性2人組のお客さんが訪れた。カバンのヒモをかじられても「可愛いからOK」と笑顔で許し、「飼える環境になったら保護猫カフェから迎えたいと思います」と話してくれた。
(写真・文 原田佐登美)
※TNR…T(Trap:捕獲器で捕獲すること)、N(Neuter:不妊手術)、R(Return:元の場所に戻し、適切な管理のもと一代限りの命を見守ること)
保護猫カフェ笑猫
愛知県名古屋市
名東区植園町3-33-1
TEL 052-753-9828
営業時間:11:00~20:00(最終入店19:00)
定休日:月曜
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Harada Satomi
愛知県在住で保護猫3匹と暮らす。著書に、世界の猫写真と紀行漫画で綴る単行本『猫にまたタビ』(辰巳出 版)。日本写真家協会会員。