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ネコのとなりに [第14回]寄る辺

ネコは身近な動物で、ヒトの社会の中で暮らしています。そのため野生動物とは異なり周囲の環境も含め、ヒトがいてネコは生きていけると思うのです。ヒトとヒトの間に繋がるいのち。今を生きる友達として向き合いながら、街の中にネコのいる風景が時代は変わってもあり続けてほしいと願うばかりです。

写真・文・イラスト平井佑之介


▲木陰で白い毛がとても目立っていた。1本の木がお気に入りのようだ。


▲9年前の“さくら”。話しかけてくるような透き通った目をしている

日差しを燦々と浴びる気が1本生えている。根元で日向ぼっこをしている白茶色のネコが“さくら”。初めて会ったのは9年前だ。

それまで“さくら”はホームレスのおじさんに大事に育てられたらしい。一緒に暮らして缶詰をもらい、おじさんの出かける背中を見届けて、そしてまた帰りを待ている。

ところがある日、大好きなおじさんは戻って来なかった。それから彼女はいつも木に寄り添いお日様を浴びながら待っていた。

“さくら”は木が大好きだ。雨の日には傘代わりに、晴れた日には木陰を作り、“さくら”の成長を見届けるように木もこの場所で生きる。

よく幹で爪を研いでいるので、木には成長の跡も刻まれているだろう。


▲おやつに立ち上がって夢中になる


▲気が強いと思われていたが、実はべたべた大好き

そんな“さくら”は避妊手術を受け、地域ネコとしてこの場所で見守られることになった。

気が強くて、触りどころが悪いとひっかくこともあった彼女に“さくら”と名前を付けたボランティアさんは365日“さくら”のためにあの木のそばに向かう。

次第に“さくら”は心を許し、ブラシや目やにを取ってもらう時にも、ノドを鳴らすようになった。


▲雪の中で佇む

暖冬で桜が開花し始めた3月の終わりに突然の大雪が降った。10歳を優に超えている“さくら”が心配になり、ボランティアさんとともに手作りの小屋にカイロを入れに行くと“さくら”の姿はなかった。

4月1日に再びボランティアさんと会いに訪れると、ウソみたいな体験をした。ある女性から「実はあの雪の日に……」と声をかけられ、“さくら”が家族として迎えられたことを知る。

「お風呂に入れてブラシをすると、部屋でぐっすり寝てくれました」と教えてもらった。いつも日の当たる窓から、道行く人を眺めているそうだ。

“さくら”を毎日見守ってきたボランティアさんは「ちょっぴり寂しいけど、安心した」と話してくれた。

春を待ちわびた桜は大雪にも負けないように力強く咲いていた。

違うカタチをしたいきものがとなりにいる奇跡。木もヒトも、“さくら”の心の支えになって、そして物語が繋がっていく。

今朝、元気な“さくら”の写真が届いた。君の嬉しそうな顔が、みんなを元気にしているよ。


▲箱入り娘。ソトネコ時代にも活躍した段ボールハウスがお気に入り(写真提供:飼い主さん)

Hirai Yunosuke
いきもの写真家。1988年生まれ。日経ナショナルジオグラフィック写真賞2015優秀賞。島や商店街で暮らす猫から、イルカやヘラジカなどの野生動物も撮影。『Nikon D800 ネコの撮り方』電子書籍出版。

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