「モップ猫、拝命す」
フカフカな長毛。
そしてハンサム、更に体格がいい。
まるでCMに出てくるような猫。
でも昔は野良だった。
Aさん宅の近辺を根城にして気ままに暮らしていた。
Aさんが飼い犬の散歩をする時、まるでお供の様について行き、散歩が終わるとご褒美としてご飯をもらっていた。
野良だから当然名前も無い。
道端でゴロゴロしてると、ゴミが長毛にたくさん付着するから近所の人たちから"モップ"と冗談半分に呼ばれていた。
そんな"モップ猫"に転機が訪れたのは、Aさん家の飼い犬が大往生を遂げた頃。
悲しみに暮れるAさん、それを判ってか、その傍を離れずにずっとついて励ますようにしていたモップ猫。自然と家に上がり込み、とうとうAさん家の飼い猫となった。
「名前はなにがいいかねぇ」
近所の人も含めて皆、思案す。
モップ猫、モップ猫……、まさにフカフカ……。
そうだ、"マフ"なんてどうかねぇ。
それ以来"マフ"は皆に可愛がられる存在となり、地域をパトロールするようになった。
フカフカな長毛でハンサム、まるでCMに出てくるような猫。
"マフ"が元野良だった事は秘密だよ。
text&photo/Kenta Yokoo