甘えん坊のきゅーちゃん(4歳♀)は、家族全員のかわいい末っ子。4年前、絶体絶命の危機から奇跡的に保護されたころは掌(てのひら)サイズで体重は195g。目も開いていませんでした。そんな儚(はかな)げな子猫が7kgの大猫に成長するなんて世の中わからないものです!
文・吉澤由美子 写真・きゅーちゃんママ
車道の真ん中にいた子猫
明らかに小さすぎるハンモックがお気に入りで、大幅にはみ出しながら満足そうにしているきゅーちゃんは、癒やし系の巨猫。
大人になっても飼い主のきゅーちゃんママさんと目が合えば、ごろんとヘソ天で構ってほしいとアピールし、隙あらば膝に乗ってくるという甘えん坊。抱っこをされると力を抜いて大きなぬいぐるみのようになってしまう。きゅーちゃんは今も家族全員にとってかわいい末っ子だ。
出会いは4年前の春だった。ある日の夕暮れ時、近所に住んでいる姪御さんから「子猫を拾っちゃった。どうしよう」と電話がかかってきた。姪御さんの子どもが猫アレルギーと知っていたので「とにかくウチに連れてきて」と答えた。
タオルに包まれてやってきたのは、目も開いていない小さな子猫。発見したのはバスも通る交通量の多い車道の真ん中だった。
通りかかった時「子猫がひかれている!?」と、慌てて乗っている自転車を降りて駆け寄り、夢中で拾い上げたのだそう。片手に収まる子猫は奇跡的に無傷で、きゅーきゅーと小さな声で鳴いていた。なぜ車道に独りでいたのか、真相はわからないけれど無事だとわかって震えるほど安堵したという。
ミルクを飲ませるのも一苦労
「猫好きの祖父の影響で子どもの頃からたくさんの猫に囲まれて暮らしてきて、生後2週間の猫を育てた経験はありましたが、きゅーちゃんはそれよりも明らかに幼く、ミルクを飲んでくれるかとても心配でした。スポイトで根気よくミルクを与え、夜中も2時間おきにミルクをあげました」と、きゅーちゃんママさん。
保護した翌日、動物病院に連れていくと、推定生後1週間で猫風邪をひいていると診断された。先住猫の大吉(6歳♂)とまる(6歳♀)は当時まだ2歳で、新入りに興味津々。猫風邪をうつさないよう一生懸命離して世話をした。きなこ(11歳♂)とぷいみ(9歳♀)は、しばらく遠巻きに見守っていた。数日するときゅーちゃんはミルクをぐびぐび上手に飲みはじめ、猫風邪もすぐに治った。
それからはまるも熱心に面倒をみてくれ、離乳食や普通のキャットフードを自然に食べるようになる。食欲旺盛で壁によじ登ったり、先輩猫を待ち伏せして飛びかかったり、家中を走り回ったりしながら、きゅーちゃんはスクスク育っていった。
心も体もおおらかに
生後10ヶ月頃のこと。しつこくちょっかいを出してくるきなこに、きゅーちゃんが思わず反撃して馬乗りになった時「この子、大きくて強いのかも」と思ったそう。変わらずよく食べて、それからも順調に大きくなり、ついに7kgに達したのだった。
さすがに普段の動きはスローになったけれど、遊びのスイッチが入ると以前のように家中を走り回る。骨格自体が大きく、筋肉もしっかりついているので動きはダイナミック。ただし、運動神経が抜群で自分や周りに被害を及ぼすことはまずない。
先住猫たちときゅーちゃんの関係はつかず離れずだ。きゅーちゃんは一人でのんびり眠るのが好きだけれど、気付くと大吉がきゅーちゃんを枕に寝ていることもある。威嚇されて「やんのか!?」とステップを返すことはあっても、追いかけっこ止まりで喧嘩になることはない。
食べるのが大好きで、きゅーちゃんママさんがキッチンに立つと一番乗りでやってきて、期待に満ちた瞳で見上げる。最近では健康を気遣ってダイエットフードを与え、他の猫たちの食べ残しをすぐ片付けるようにしている。ちょっと気を許すと同居猫の皿に移動するので油断ならないようだ。
「あの春、小さなきゅーちゃんを姪が発見していなかったらと思うと恐怖の声が漏れそうなほどゾッとします」と、きゅーちゃんママさん。車が次々に通る道の真ん中で無傷のまま保護された奇跡の子猫は、その並外れた強運と生命力で温かい家庭と穏やかな暮らしを手に入れ、おおらかな心と体いっぱいにみんなの愛を受け止めているのだった。
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