この世界の片隅で、ネコ。EP:108『猫島』

猫のいる島、いわゆる"猫島"が話題になって久しい。猫好きにとっての楽園とでも言うのだろうか。

僕自身は猫島へ行った事はない。行けばきっと猫達にまみれて、何百、何千枚も写真を撮って…おまけに帰れなくなりそう、たぶん住んでしまう。

だが、猫が多い島へは何度か訪れた事がある。どこの島も都会より猫が多いように感じる。車が少なかったり猫に寛容だったりするのだろう。

15年ほど前に訪れた宮城県のとある島。本土から連絡船でわずか20分ほど。特に観光名所もない小さな島だが、なぜかふらりと降り立った。

まだフィルムで写真を撮っていた頃だ。軒下に猫がいたので這いつくばってシャッターを切っていた。

すると女の子が補助輪のついた自転車でガラガラやってきた。

「なにやってるのー?」

這いつくばっている姿が可笑しかったのか笑いながら話しかけてきた。

猫を撮っているんだよ、そう言うと

「私にも撮らせてー!」

まあ1~2枚なら良いかと思ってカメラを渡す。すると数秒で5~6枚シャッターを切った…まあ、まあいいか…。

それで満足してくれるかと思ったのだが…

「あっちにも猫いるよー!」

とカメラを持ったままトテテテとどこかへ走っていった。あれ、自転車はいいのかな?とりあえずついて行くしかない。

女の子が走っていった先、たしかに猫がいた。そしてまたカシャカシャカシャと連写。フィルム足りるかな…。

その後、行く先々に猫がいた。この島の子だ、当然どこに猫がいるのか知っている。だけどカメラは返してくれない…トホホ。

その後、島を案内してくれたのだけれど

「ここがお祖母ちゃんの理容室!」

カシャカシャ。

「ここが私の家のお隣のお隣ー!」

カシャカシャカシャ…。

「この子は亀の"亀吉"、私の友達ー!」

カシャカシャカシャ、ウィーン…え、ウィーン?フィルムが終わってしまったのだ。

「ここが私の家なの~」

女の子は自宅のドアを開き、ただいまーと帰宅する。母親が出てきたので事情を説明すると申し訳なさそうにされていた。

いや、いいんです。島を案内してもらってとても楽しかったし。そしてようやくカメラを返してもらった。

上がっていってお茶でも…というのを連絡船の時間を理由にして固辞し、ばいばーい、と女の子と別れた。

帰り道には女の子の乗っていた自転車が置いたままだった。あれ、いいのかな?そんなところも島っぽい。

後日。現像した写真にはピントの合ってない猫やブレてる猫だらけ。

だけどネガにしっかりと刻み込まれていたそれは、どこか味があって素敵だった。あの島の思い出だ。

そして最後のコマには亀吉が写っていた…。

 

【横尾健太】Yokoo Kenta
Twitter 猫島警部 @nekojimakeibu

熊本市在住。1999年より細々と猫写真を撮り始めて今では太々と猫に浸かる。2016年熊本地震で被災、一時的に東京へ避難。その先で様々な人と猫に癒されお世話になる。「ネコまる大賞」「猫の手帖キャネット大賞」「よみうり写真大賞ファミリー部門季節賞」受賞。使用機材:通常はニコンのD800、旅先はペンタックスのKP、夏はニコンのnikon1 J5。でも機材にこだわりはありません。

プロとはそれで生活できる人だと思うので、アマです。なにもかも脇が甘い性格。写真におけるスタンスは皆無です。猫さまを見ると興奮して「あ、あ、あ」となり何も考えずにシャッター切ってます。「猫を使って金儲け」よりも「金を使って猫儲け」したいな。いろんな猫に出会いたいです。

-猫びより

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