2016年、熊本を襲った大きな地震。お世話になっている方々、猫たちのいる地区も甚大な被害を受けた。人も猫も皆、無事だったのが不幸中の幸いだ。
そんななか。
ハナちゃんという雌猫が全壊したとあるお宅で飼われていた。飼い主さんの転居先は猫が飼えないので、近くのお寺さんに預けられた。
しばらくはお寺で過ごしていたハナちゃん。しかし1週間後にいなくなった。最初に探した場所は勿論、全壊したお宅。やはりいた。
何度もお寺へ連れ帰ったが、やはり元居た場所が良いのか戻ってしまう。仕方ないのでお寺さんは餌と水を届け毎日通う事に。
「猫は家につく、というからね」
お寺さんはそう言う。
「よっぽどここが好きなんだね、もうここで暮らしな」
と言った。お寺さんは壊れた家の敷地に餌と水を運ぶ毎日が続き…。
1年後、飼い主さんが少し離れた場所に新居を建てた。飼い主さんがもどってくるよ、よかったね、ハナちゃん!
こうして猫と飼い主さんはまた楽しく暮らすのでした、めでたしめでたし…。
…という訳にはいかなかった。なんとハナちゃん、新居に引っ越した夜に脱走した。最初に探した場所は勿論、全壊したお宅跡地。やはりいた。それからというもの、いくら新居に連れ帰っても脱走する。
飼い主さんもお寺さんもお手上げ。また餌と水を運ぶ毎日…。
どこか満足気なハナちゃん。飼い主さんとの『別居』状態は今も続いている。
写真・文 横尾健太
Twitter 猫島警部 @nekojimakeibu
熊本市在住。1999年より細々と猫写真を撮り始めて今では太々と猫に浸かる。2016年熊本地震で被災、一時的に東京へ避難。その先で様々な人と猫に癒されお世話になる。「ネコまる大賞」「猫の手帖キャネット大賞」「よみうり写真大賞ファミリー部門季節賞」受賞。使用機材:通常はニコンのD800、旅先はペンタックスのKP、夏はニコンのnikon1 J5。でも機材にこだわりはありません。
プロとはそれで生活できる人だと思うので、アマです。なにもかも脇が甘い性格。写真におけるスタンスは皆無です。猫さまを見ると興奮して「あ、あ、あ」となり何も考えずにシャッター切ってます。「猫を使って金儲け」よりも「金を使って猫儲け」したいな。いろんな猫に出会いたいです。