
浄土真宗本願寺派 居原山 圓満寺
大阪府大阪市
小森正孝(写真・文)
大阪万博で賑わっていた大阪市内にある圓満寺には、約500年の歴史がある。
その始まりは戦国時代、一大勢力として君臨するようになった本願寺と畿内の守護大名との戦いまで遡る。

大阪環状線の野田駅近く、住宅街の中にある寺院には都会の喧騒は聞こえない。境内には江戸時代に建立された本堂や山門が戦火を免れ残っている
天文元年(1532)、争いの中で京都の山科本願寺が焼失すると本願寺第十世證如(しょうにょ)上人は大坂石山本願寺(現大阪城の地)へ逃れた。そしてその北西側の要塁であった野田村に視察に訪れた際、後に畿内に君臨することとなる武将、細川晴元の一味が襲い掛かった。證如上人を救うため、野田村の信仰篤い門徒が身を投げ打って戦い、21人が討ち死にした。
亡くなった21人の命をかけた信仰心と心意気を末代まで伝えるため、證如上人がご本尊(阿弥陀仏画像)を奉納し創建されたのが圓満寺というわけである。
そんな壮絶な歴史とは反対に、現在の圓満寺には愛らしい犬と猫が暮らしている。

ブラッシングや腰の辺りをトントンされるのが好きらしく、若坊守におねだりして甘えていた

テンが来た当初は距離を保っていたアミだが、お姉さんの自覚があるのか今ではテンの面倒を見るように
「猫は英語のtemple(寺院)から名付けたテン(5歳♂)、犬は阿弥陀様から前二文字を拝借したポメラニアンのアミ(7歳♀)です」と教えてくれたのは住職の棘恵淨(いばらえじょう)さん。

子どもの頃から犬しか飼ったことがなかったけれど迎え入れると可愛く愛おしくなりました、と恵淨さん
「テンとの出会いは2019年の夏。にゃーにゃー鳴き声がしたので坊守が境内を探すと、生後2ヶ月ほどの子猫が迷い込んでいました。それまで犬しか飼ったことがなく迷いましたが、これも何かのご仏縁だと思い迎え入れました」。
話をしていると若坊守がテンを連れてきてくれたが、すぐ人影に隠れてしまった。元々警戒心が強いらしいが、人がいても本堂の前や中庭で寛(くつろ)ぐ姿を見せてくれることもあるという。

緊張をしても好奇心があるようで、怖いもの見たさで近づいたり離れたりを繰り返す
しばらく話をしていると、カメラに興味を持ったのかテンが恐る恐る出てきた。側まで近づいてきたのが嬉しくて、静かに感謝をしながら撮影をした。

小さな物音にも敏感なテンなので、無防備に寝転ぶ姿には心奪われる

週に2回ほど本堂でヨガの教室があり、テンは時折様子を伺っていた
テンを迎えてから、若坊守がインスタグラムにその姿を投稿すると、門徒以外の猫好きな方にも圓満寺を知ってもらうことが増えたという。
「寺院は敷居が高いと思われがちですが、今はテンに会いに来て下さる方もいて、新しい交流が生まれたことが嬉しいです。
人見知りをする猫なので中々会えないかと思いますが、SNSを通してテンやアミの様子を楽しんでいただければ」と恵淨さんが笑顔を見せた。

暖かな日差しを浴びてのんびり過ごしたり、気が向いたら客殿の屋根に上って高みの見物
浄土真宗本願寺派 居原山圓満寺
大阪府大阪市福島区玉川4-4-25
TEL 06-6441-2791
https://fukusima-enmanji.org
Instagram:@enmanji_ibara
Komori Masataka
1976年生まれ、愛知県一宮市出身。大阪芸術大学写真学科卒業。同大学副手として研究室勤務。現在フリーカメラマンとして猫撮影を中心に活動。「2026年招福! お猫様カレンダー」(アートプリントジャパン)が好評発売中。
HP:https://komorimasataka.com/home




