【香港】マンションの「管理人」ならぬ「管理猫」!?

日中は決して門の外には出ないお利口さんな麗麗

筆者が住んでいる九龍城(カオルーンシティ)に、管理人ならぬ「管理猫」がいるマンションがある。管理人が飼っているわけではない。なぜなら、香港の住宅の管理人は、ほとんどがセキュリティーガードが目的で派遣されている、いわゆる警備員だからだ。管理人室の前に餌と水とベッドが用意され、主な世話は管理人や清掃員がしているが、マンションで飼っているということになる。普段は門越しにしか姿を見られないのだが、早朝や夕方ともなれば、周辺の見回りを怠らない管理猫「麗麗(ライライ)」に出くわすこともある。

夕方の見回りに出てきた麗麗は人慣れした甘えん坊

実は、このような管理猫はそう多くない。天を突くような超高層ビルが密集している香港だが、その中でも住宅は様々に分類され、管理も異なることから、管理猫にはなかなかお目に掛かれないのだろう。

まず、管理人が全くいない住宅の代表は、築60年以上のエレベーターも都市ガスもない6階までの低層住宅で、「唐樓(トンラウ)」と呼ばれるアパートだ。住宅全体に誰でも自由に出入りでき管理人はいないのだから、管理猫もいない。ただ、街猫達の出入りも自由なので、周辺には街猫が多い。

住人を見かけるときちんと近寄ってお見送りをする

次に、「洋樓(ヨンラウ)」と呼ばれる、築年数の古い一棟建て20階ほどのマンションがある。麗麗のマンションだ。住人の組合で管理しているため、管理人は常駐している所とそうでない所がある。また、管理人がいても、警備員というより、一般の人の場合も多い。だからこそ、融通が利き、管理猫も成立しやすいということか。

管理が厳しいのは、「公屋(ゴンンゴッ)」で、政府運営の低所得者向け賃貸住宅、いわゆる団地だ。日本では、30階40階建てならセレブしか住めない超高級タワマンだが、香港では団地も超高層。しかも、制服の管理人が24時間常駐しており、出入りするにも住人以外は身分証明の提示が必要な所もある。住人のペットも不可なので、管理猫は無理そうだ。

以前筆者が住んでいた界隈の取り壊しが決まった唐樓

さらに、都市開発に伴い、地
下鉄駅やショッ
ピングモールとも直結した新興住宅群「屋苑(ンゴッユン)」は、何棟もの超高層ビルで構成され、日本なら大規模なタワマンといったところだ。各々の入口に暗証番号やカードなど住人しか入ることのできないセキュリティがあり、制服姿の管理人も複数人いる。まるでホテルのような管理体制で、管理猫など考えにも及ばない。

取り壊し後は低層階にショップが入った超高層マンションに

治安の確保というなら、管理人がしっかりしている方がいいのだろうが、毎日の生活に追われて帰宅する身としては、管理猫に迎えてもらいたいものだ。

(文・写真 塚碕由香/写真・韓思思)

Tsukazaki Yuka
在香港歴
26年のフリーライター。広東語で通訳、翻訳、日本語教師などもこなす。著書に『香港の大スター☆クリームあにき』(辰巳出版)。

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