美術のなかの猫たち 写真よりも本物らしい黒猫の絵

石田淳一さんは静物画を得意とする写実画家。作品の特徴は存在感です。外見だけでなく、重さや手触り、物を取り巻く空間と時間まで描いているよう。ある意味、写真よりもリアルなのです。そんな石田さんには黒猫のジジ(♀)という愛猫がいて、近年好んで彼女を描いています。

 

ペンと水彩によるドローイング(写真提供・石田淳一)

まずペンや水彩によるドローイング。すぐに姿勢を変える猫を描くのはスピード勝負です。ペンで両脚を後ろに投げ出してくつろぐ姿を素早く描き、水彩で肉付きや陰影を補完したのでしょう。かなりの短時間で仕上げたと見えますが、肩周りや太もものしなやかで逞しい筋肉が捉えられています。

 

ペンと水彩によるドローイング(写真提供・石田淳一)

これも水彩とペン。ご飯をねだっているのか甘えているのかはわかりませんが、表情がかわいらしいです。シンプルな絵なのに、背中から腰の肉付き、猫が座る時の重心のかけ方まで伝わってきます。

 

アクリル絵具で描いた作品。お腹を撫でさせてくれそう(写真提供・石田淳一)

この絵はアクリル絵具で描かれています。猫の顔の左側は光が反射してところどころ毛が白く見えていて、影になる右側はべったりと黒い。瞳の色も水面のように変化に富んでいる。そんな繊細な明暗のグラデーションが見事に描かれています。

 

自然な立体感があって、手触りすら感じられるような油彩作品(写真提供・石田淳一)

そしてこれは油絵。猫の寝息まで聞こえてきそうです。この存在感を表現する秘訣は、まず一点一点たっぷり時間をかけて丁寧に描くこと。そして描くものを触ったり、ただぼうっと眺めたりしながら、時間をかけてその存在を感じることだそうです。

 

石田さんの絵を見ていると、本当にそこに猫がいるような気がすることがあります

こちらも油絵。とても小さいながら、やはり一人の画家が猫とともに積み重ねた時間を感じさせてくれます。そして絵の前に立てば、猫の美しさに魅せられながら「この子は何を考えているのだろうか?」と想像する、猫と目が合った瞬間のような時間を過ごせることでしょう。

 

アートフェア東京での展示風景。菱田春草『黒き猫』へのオマージュで柿の絵と並べて展示

取り扱い画廊 一番星画廊
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-猫びより