とっても表情豊か！漫画家・類さんちのしまねこ3姉妹

写真・類 Text by Saito Minoru

『茶トラのやっちゃん』（KADOKAWA）は’23年現在シリーズ3冊と続編1冊が刊行される人気猫コミック・エッセイ。創作のきっかけは、作者の類さんが初めて猫を迎えて知った猫の豊かな感情表現であり、気持ちによってコロコロと変わる表情なのでした。

類さんちのやち・ちよ・もも

名前：やち
通称：やっちゃん性別：♀
年齢：6歳体重：4.6kg
性格：さみしがり屋で神経質

名前：ちよ
通称：ちーちゃん性別：♀
年齢：4歳体重：4.9kg
性格：甘えんぼで気分屋

名前：もも
通称：ももちゃん性別：♀
年齢：4歳体重：4.2kg
性格：食いしんぼで人間大好き

保護した子に泣かされた

「母が近所の病院の前に捨て猫が居るって言ってたのでとりあえず保護してきました」

2017年6月、新潟に住むある会社員が、茶トラの子猫の写真とともにそうツイートしました。アカウントの主・類さんは、特撮と任侠ゲームをこよなく愛する極々普通のオタク会社員でした。

類さんが駆けつけた時、子猫の目からは涙が溢れていました。衰弱してはぐれてしまったのか母猫は現れません。シャーシャーと威嚇しますが、放置すれば長くは生きられないでしょう。類さんはタオルで子猫を捕まえ自宅に連れ帰りました。類さんのお母さんによれば外で3時間は鳴きつづけていたそう。

「この小さな体で声が枯れるほど鳴いて一体誰に助けを求めていたのか……絶対幸せにしてみせる！」

子猫のやかましさに眠れぬ夜、そう心に誓った類さん。生後約2ヶ月のメスだとわかった子猫は、「八千代」の長寿を祈って「やち」と名づけられました。初めて飼う猫に試行錯誤しながら必死にお世話した甲斐あって、やちは類さんに心を開いていきました。

驚いたのは「猫は感情豊か」ということ。猫に懐かれたことがなく、猫が感情を見せない生き物だと思い込んでいたのに、やちは豊かな表情と声で気持ちをアピールしてきます。

先住のシニア犬でラブラドールのウッちゃんには、大きな体にびびってか、いつも威嚇ばかりしていましたが、寝たきりになると見守るような素振りを見せるように。亡くなった時は鼻チューで最後のご挨拶をしたといいます。

──忘れられない顔

「あら、やだ！」

やちはたびたび口に手を当てる仕草を見せるように

カリカリを噛みしめシワシワ顔

「もう少しおいしそうに食べてくれると嬉しいです」（類さん談）

来客を警戒してスコティッシュ化

鋼のように太い神経の持ち主と見られるちよですが、来客を警戒して耳を折り畳むことも

刺身を分けてもらえず激おこ顔

やちは刺身が大好物。期待に反して分けてもらえず激怒した顔がこれ

寝起き一番のドヤ顔

類さんは猫たちに起こされることもしばしば。起きたらこの顔で見つめられていることも

猫に導かれて脱サラ

20年1月、そんな猫に対する驚きや感動、やちを通じて知った猫の感情表現の豊かさを漫画にして、Twitterに投稿したところ思わぬ反響を呼びます。フォロワー数1000人程度のアカウントは一気に注目を集め、フォロワーは1月末に1万人、8月には5万人に達しました。9月には単行本『茶トラのやっちゃん』が発売され、翌冬には勤務先を退職して漫画とイラストに専念することに。念願の一人暮らしもスタートしたのでした。

初めてのコミック制作に忙しくしていた頃、類さんは友人が保護した猫を迎えました。「ちよ」というその子猫は元気いっぱいに暴れ、やちはストレスで声が出なくなる時期もありました。しかし類さんがやちをいつも最優先する方針を徹底したおかげで心も鎮まり、面倒見のいい先輩になったのでした。その後、事情があって前の飼い主が手離した「もも」も迎えた類さん。毎日はますます賑やかになり、漫画に描かれる猫の表情もいっそう豊かになっていきました。仕事も順調な類さんですが、猫への感謝は片時も忘れません。

「3匹とも訳ありなので『絶対幸せにしよう！』という思いでお世話しているのに、甘えてくれたり可愛らしい姿を見せたりしてくれるので、逆に幸せにしてもらっている気がします。猫と暮らす前は部屋も散らかり、不規則な生活を送っていましたが、猫と暮らし始めてからは定期的に掃除をするようになり、生活が規則正しくなりました。猫に健康管理されている気分です（笑）」

──忘れられない顔

子猫のちよがハートをズッキュン！

生後2ヶ月頃に迎えた当時のちよ。類さんだけでなくご両親も一目ですっかり虜とりこになったそうです