猫好きがつくった、猫好きのための「ねこもなか」

「ねこもなか」は皮と餡が別包装になっていて、食べるときに自分で餡を詰めるスタイル
(写真提供・イクミママのどうぶつドーナツ!)

「こねこのミケ」など可愛いこねこドーナツで有名な「イクミママのどうぶつドーナツ!」のオーナーパティシエ中尾育美さん。
ドーナツをはじめ「ねこどらやき」「にくきゅうまんじゅう」「ねこカステラ」などさまざまな猫のお菓子の生みの親だけあって、もちろん大の猫好きである。猫の話をしたら止まらない。

毎日猫と一緒で、猫を保護した経験も多い中尾さんだからこそ、ちょっとした表情やしぐさなど猫好きの心に刺さる魅力を、お菓子のデザインに生かすことができるのだろう。

B:こねこドーナツは、こねこのミケ、カフェちゃん、アメリカン ショートヘアのほかにも、
トラ、クロ、シャム猫もいて、それぞれの味がたのしい

現在、中尾さん宅で暮らす猫は4匹。先住猫の「まる」ちゃんに、「みー」「はち」「ひげ」の3匹が加わった。みーちゃんは保護猫で、はちちゃんはその娘、そしてひげくんも中尾さんが救出して保護した猫だ。

はちちゃん(8歳♀)は、人なつっこくて社交的な接待係でもある

「みーちゃんは主人が出先で出会った猫です。にゃーにゃー鳴きながら人の後をついて歩いていたけど、その人が行ってしまった
ら、くるっと振り向いて主人にロックオン! ダーッと一直線に駆け寄ってきたんだそうです」。

きっとご主人を見込んだのだろう。小さいので保護して中尾さん宅に迎えられたみーちゃん、1ヶ月もするとどんどん太ってきた。「これはおかしいぞ? と思いました。そう、みーちゃんは妊娠していたんです」。お腹に赤ちゃんがいたから、幼いけれどお母さんのみーちゃんは、必死で安心して暮らせる環境を探したのだった。

お母さんだけど、まだまだやんちゃな、みーちゃん(9歳♀)。娘のはちちゃんよりも「ちゅ~るは私が先!

予想もしなかった妊婦猫を前に慌てた中尾さん、だが、みーちゃんは偉かった。ある日、中尾さんの布団で自力で出産。誰に教わったわけでもないのに、きちんと羊膜を舐め、へその緒を嚙み切り、胎盤も自分で処理した。子猫は全部で5匹だった。

しかし3日後。見ると子猫は1匹もいない。たまたま下着を入れた衣装ケースを開けると、子猫がわらわらと出てきた! みーちゃんは子猫を1匹1匹咥えて、安全に子育てできる場所に運んで行ったのだった。その子猫たちは里親さんに引き取られ、残った1匹がはちちゃんだ。

子猫を産んだときはまだ8ヶ月くらいだったみーちゃん。衣装ケースで子育てする姿が立派すぎる!(写真提供・中尾育美)

たくさんの猫を幸せにしてきた中尾さん。新たなお菓子を猫のフォルムでつくりたいと、開発に着手。材料はもちろん形や箱にまでこだわり抜き、約2年の歳月をかけて完成させた。

2013年3月号にも登場した、まるちゃん(13歳♀)。こんなに大人猫になりました!

猫好きが「可愛い!」と思わず手に取りたくなる本格派の和菓子「ねこもなか」だ。猫のへそ天ポーズも、ぷっくりしたお尻のフォルムも、猫好きにはたまらない。さらに箱は、耳やしっぽや足先が飛び出たデザイン。猫仲間への手土産にすれば喜ばれること間違いなしだ。

一昨年、生後10日ほどで保護されたひげくん(1歳♂)。
※詳細は中尾さんのインスタグラムのハイライト「保護ねこ」でどうぞ

「猫たちがへそ天で寝ている姿を見て癒やされる気持ちを、猫好きのみなさまと共有できたら嬉しいです!」

(文・写真 鈴木美紀)

東急元住吉駅近くの店舗では、運がよければ中尾さんに会えるかも

イクミママのどうぶつドーナツ!

神奈川県川崎市中原区木月3-6-18 モトスミコアビル1F
(現在1階店頭は休止中。2階事務所にて10:00~18:30販売中)
TEL 044-434-3640
定休日:年始のみ
https://ikumimama.com
Instagram:ikumimama_mike

 

Suzuki Miki
フリーライター。現在は三代目の猫たち「ゆきこ」と「まふぃん」にかしずく日々。著書に『現代にゃん語の基礎知識』『花のある風景』。小さなねこ図書館を開くのが夢。

-猫びより