文・写真 鈴木美紀
桜並木に面した郊外のフラワーショップ&アトリエ。山小屋風のおしゃれな外観に惹かれて中に入ると、選びぬかれた美しい花々とともに、可愛い猫が出迎えてくれる。
埼玉県蓮田市。駅からバス、徒歩と、決してアクセスはよくない場所にあえて花小屋「soranihana(ソラニハナ) 」を構えたのは、自然豊かな静かな場所でフラワーアレンジに集中したいというえつこさんのこだわりだ。
山登りが趣味のえつこさんが、大好きな山小屋をイメージしてハーフビルドで建てたお店。
週の半分は予約注文のブーケやアレンジメントの制作日で、あとの半分はお店をフリーオープンするほかリースづくりなどのレッスンを開いている。
そして楽しみなのは、看板猫に会えることだ。ルゥちゃん(♂)は、10年前からえつこさんと暮らす店長。昔は人懐っこかったというが、現在はシニアになったせいかひとりの時間を楽しむことが多い。
そこで、というわけなのだろうか、4年前から店長見習いになった栗ちゃん(♀)が、物怖じしないお転婆ぶりを発揮して訪れる人を歓待してくれる。
「ふたりとも、ある日突然お店に入って来て、前から決まっていたことかのようにここで暮らすようになった元野良の猫なんですよ」
えつこさんは以前は犬を飼っていて、どちらかといえば犬派だったという。なのにどうして猫が?
「近所に野良猫がいたらお世話をしたり里親探しをしたり、飼ってはいないけど猫も好きだったんです」
昔お世話をした野良猫が亡くなったときのことを話すと、今でも涙が止まらなくなるえつこさん。そんな人柄を、猫はちゃんとわかっているのだろう。特に栗ちゃんは、愛犬のベルちゃんが亡くなった後、まるでその生まれ変わりのようにやって来て甘えたのだという。
「不思議ですね。ふたりとも前からごはんをあげたりしていたわけでもないのに。ちょこんとお行儀よくお座りして私を見るので『どこから来たの?』としゃがんで話しかけると、顔をスリスリしてきて。なにか運命的なものを感じます」。
自らの意志でsoranihanaの猫になろうとしたかのようだ。
「植物は猫には危険なものも多いのですが、教えたわけでもないのに手を出したり食べたりはしません」と、さすがお花やさんの看板猫。
どこを見ても美しく花がディスプレイされたお店の中で、今日もルゥちゃん栗ちゃんはおだやかに暮らしている。ブーケなどはSNSから注文できるが、センスあふれるお店を訪れ、えつこさんの人柄と猫の魅力に生でふれるのがおすすめだ。花と猫と、そして人が集う場所。ゆったり時間をかけて訪れたい。
鈴木美紀
フリーライター。現在は三代目の猫たち「ゆきこ」と「まふぃん」にかしずく日々。著書に『現代にゃん語の基礎知識』『花のある風景』。小さなねこ図書館を開くのが夢。
soranihana
※店舗営業日及び時間等はSNSにて
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