神様・仏様・お猫様 神社仏閣の猫 第12回

ミーちゃんと弥勒菩薩

江戸時代末期、アメリカのペリー艦隊をはじめ多くの外国船が訪れた静岡県下田市。歴史ロマン漂う玉泉寺はその下田にあって、日米和親条約でアメリカ人の休息・埋葬所に指定され、後にタウンゼント・ハリスがアメリカ合衆国総領事に着任した際、総領事館が置かれた寺院である。大正時代に行われた修繕工事のため、NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公・渋沢栄一が尽力したという逸話も残る。幕末の開国の中心舞台であり、歴史に残る場所と言える。

今では静かな漁港にある山門を抜けると本堂が見え、住職の村上文樹さんとともに、猫のミーちゃん(16歳メス)と犬のハーディー(15歳オス)が迎えてくれる。新型コロナウイルスの流行前は、競うように撫でてほしいと参拝客にアピールしていたそうだ。

住職の村上さんとミーちゃん

一緒にゴハンを食べている時、ミーちゃんの分をもらおうとしてパンチをされることもあるハーディー

「子供時代から猫や犬と生活をしていました。小学生の頃には、寝ていると猫が布団に入ってきて子猫を生んでいたこともありました」と笑顔で話す村上さん。

しかし、ミーちゃんがくるまで、しばらく猫がいない時期もあったという。子猫だった頃のミーちゃんは外猫だったが、寺に滞在しながら絵を描いていたナターシャさんというロシアの画家に懐き、その縁で寺猫として飼われるようになった。

昔はヤンチャで狩りが上手だったミーちゃん。蛇を捕まえて台所に隠して村上さんを驚かせたことも

朝の鐘を撞つく時間になると、住職とともに姿を現してゴハンを食べ、しばらくすると朝の縄張りのチェックのためか境内をパトロールし、昼寝を楽しむのがミーちゃんの日課だ。本堂に残るハリスと書記官のヒュースケンの部屋は、ミーちゃんお気に入りの昼寝スポット。

人のいない本堂で昼寝

朝の鐘が鳴る時間のパトロール後は朝食

「人は欲があるし、思うようにいかなければ悩みます。一つの悩みが解決しても、次の悩みが生れます。でも猫は悩まない。猫は本能のままに生きるので、悩むことはありません。〝悩まない〟という猫の生き様や姿勢は人間にとって一つの生き方の参考になると思います」と村上さん。

人間の歴史はミーちゃんには関係ない。大切に見守ってくれる家族がいれば十分だよ、と、諭さとされた気がした。

ミーちゃんのご先祖様もハリスに会ったのだろうか?

取材の日は暑かったので水分補給もまめに

近代日本史と静かに繋がる玉泉寺、ミーちゃんの生き様と一緒に学びに訪れたい

曹洞宗 瑞龍山 玉泉寺
静岡県下田市柿崎31-6
TEL 0558-22-1287
https://www.izu-gyokusenji.or.jp

境内に建つハリス記念館が往時を偲ばせる。在任中の部屋も残る

幕末の頃に、日本で亡くなった米国やロシアの乗組員の墓地もあり、アメリカのカーター大統領(当時)も訪問した

約440年の歴史がある玉泉寺。本堂は幕末の動乱期直前の1848年に落成

小森正孝(写真・文)
1976年生まれ、愛知県一宮市出身。大阪芸術大学写真学科卒業。同大学副手として研究室勤務。現在フリーカメラマンとして猫撮影を中心に活動。写真集『ねころん』(株式会社KATZ)等。本連載のカレンダー「招福 神様・仏様・お猫様 〜神社仏閣の猫〜 カレンダー2022」が好評発売中。
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