ネコは身近な動物で、ヒトの社会の中で暮らしています。そのため野生動物とは異なり周囲の環境も含め、ヒトがいてネコは生きていけると思うのです。ヒトとヒトの間に繋がるいのち。今を生きる友達として向き合いながら、街の中にネコのいる風景が時代は変わってもあり続けてほしいと願うばかりです。
写真・文・イラスト平井佑之介
いきものは環境ととなり合わせ。日当たりのよい土の道。森に住むトラのように〝だいちゃん〞が肩を揺らして、のしのしと歩く。爪とぎをして緊張をほぐすと、口角を上げた優しい顔で振り返り、「ついてきなよ」と大股でどこか誇らしげに先導する。木々の隙間から淡く照らす陽だまりで、突然足を止めて「どてっ」と音を立てて倒れ込む。口角を上げて僕を誘う。
▲優しい表情が見るヒトの心を温かくしてくれる
〝だいちゃん〞が空気を掴むように前肢をグーパーすると、儀式が始まる合図。そのまま仰向けに白いお腹を出して、のび―っと寝転ぶ。ネコが何気なく通る木漏れ日の道は、お腹いっぱいにお日様を浴びる大切な場所だった。
▲「ぼくはだいです」と笑っているよう
へそ天のままゆっくりと足をじたばたさせて、右にコロン、左にコロン。通り行くヒトの笑い声が聞こえると体が固まる。大胆に陽だまりを感じていたかと思うと、実はどんぐりの落ちる音で慌てて起きる怖がり屋さんだ。
▲お腹を出すのはヒトでいうとどんな感情なのだろう
〝だいちゃん〞がこの場所が好きな理由がもうひとつ。突然ネコが変わったように甘えん坊を封印して、ネコ背をできるだけ伸ばして座る。ヒゲの向いた先にはずっと気になっているミケネコの〝みこ〞が顔を覗かせていた。
まるでネクタイを締め「私はコロガリマセン」と言わんばかりに〝だいさん〟は紳士のように振る舞う。きびきび動き、〝みこ〟のすぐそばにまで近づくと、優しいネコパンチを受ける。それでも目をつぶって寄り添う〝だいさん〟に遂におでこを寄せる。
▲“だいちゃん”が気になるネコの“みこ”
▲気になってそばに行くと、優しいパンチをもらった
警戒心の強い〝みこ〟がすぐに草むらに隠れると、〝だいさん〟の表情が緩む。どうやら大好きな〝みこ〟の手前、少し背伸びをしていたようだ。実は君が寝転がるのを、〝みこ〟は知っているんだよ?
日が傾いてきて様子が気になり見に行くと、そこには日当たりの変わった場所を選び安閑とした〝だいちゃん〟の姿があった。出逢ったほんのわずかな時間に垣間見える幸せ。ネコにとって居心地の良い場所がずっとこのままでありますように。
誰の心も優しく包む、〝だいちゃん〟はまるで陽だまりのようなネコだ。
Hirai Yunosuke
いきもの写真家。1988年生まれ。日経ナショナルジオグラフィック写真賞2015優秀賞。島や商店街で暮らすネコから、イルカやヘラジカなどの野生動物も撮影。ヒトと動物や自然が仲良く暮らせるきっかけになりたい。「今を生きる」いきものの姿を伝えたい。『NikonD800ネコの撮り方』電子書籍出版。LINEスタンプ「ネコのお便り」が好評発売中!
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