「仁義」
スリムでカッコよく、チャームポイントの靴下が目立つ猫がいた。
ソックス君と呼ぶことにした。
恵まれた天性の容姿。それにアスリートのような体形。スリムながら所々、筋肉がしっかりついている。
そして体重の維持も怠らない。なんと猫ながら常に餌の量をコントロールしている。きっとモテるだろうな、と思い観察していたが子孫繁栄にあまり興味はなさそうだ。
ある噂を聞いた。
この地区の元ボスはソックス君だったらしい。それはそれは若き暴君で専制君主だったとか。
ところが脂ののったコワモテがこの地区に攻めてきて彼と対峙、血で血を洗う争いになりソックス君は敗れた。瀕死の重傷を負ったらしい。
新しいボスに就任したコワモテは当然皆に服従を求めたが一匹だけ従わなかった。コワモテと対峙する事になるが…能ある鷹は爪を隠すし、能ある猫の爪はとても鋭利だった。ケケ君というその猫の一撃にコワモテが逆に瀕死の重傷を負ったとか。
ソックス君は生死の境をさまようが奇跡的に生還した。心配そうに看病していたのは誰あろうケケ君だった。
それ以来、ケケ君を立て続ける彼。当の本人は迷惑そうに逃げ回っているが…。ソックス君、日々の節制もケケ君の為なんだろう。
「男が男に惚れた」
ならぬ
「雄が雄に惚れた」
猫の世界にも義理人情があった。
text&photo/Kenta Yokoo