この世界の片隅で、ネコ。EP:12「ナサケナネコ」

「ナサケナネコ」

皆から笑われ、からかわれる猫、

その名もナサケナネコ。

顔が生まれつき情けないのが運の尽き。
顔の自信のなさから来てるのか、性格も臆病で誰も触ったことがないという。

町の人によくイジられている。
なのでほとんど車の下にいて生きている。
餌の時間だけ現れてご拝顔できるという。

だけどこのナサケナコには庇護欲を掻き立てる魔力がある。
そのこけた頬、垂れ目、ひゃあひゃあという鳴き声…

もしかすると人間におけるヒモ、ジゴロの類かもしれない。

このジゴロにひっかかったのが近くの青果店。
毎度そっと餌をあげる。
無論彼は警戒するのだが、回を重ねるごとに徐々に距離が縮まってきたと話す。

一度、地区のボスが青果店の餌を横取りした。
ナサケナネコは黙って見てるどころか2~3日行方をくらました。

どこまで情けない!

とある日、足を引きずり傷をおった彼を見た。
何かの抗争に巻き込まれたか。
普段は車の下にいるはずだが、その時は青果店に直接入っていった。
すったもんだの末、病院に連れて行ってもらい事なきを得た。

あのナサケナネコが…!!
噂は町を駆け巡った。

するとどうだろう。

お見舞いの品が多数、青果店に届いたという。
なんだ、ナサケナネコは町の人から愛されていたのだ。

傷も完治し元の生活に戻った頃、少しだけ町の人の心を許したのか「ナサケナちゃん」と呼びかけると

「ひゃあ」

と挨拶を返すようになった。
自信のない表情も少しは…変わってないか。

彼はやっぱりナサケナネコだ。

情けない事さえ魅力の内なんて、猫は不思議な生き物だ。

 

text&photo/Yokoo Kenta

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