里山の子、さっちゃん EP:9「サチとゴロー」

さっちゃんを見つけるとすぐにかけ寄りスリンとするゴローくん。

甘えたいのか、守りたいのか、とにかくさっちゃんが大好きのよう。

「あ、さっちゃんだ!」

遊びに夢中になっていても、遠くにいても、さっちゃんを見つけるや、ゴローくんは飛んでいきます。さっちゃんのあごの下に、頭をさしこんで、スリ、スリ、スリン。

あれ、さっちゃんがコケちゃた。しまった、という表情のゴローくん。そーっとスリンしたはずなのに。でも、毎回、スリスリはやめられません。

だって、さっちゃんが大好きだから。さっちゃんをひとりぽっちにしときたくないから。

サチ、もうすぐ10歳。ゴロー、まだ1歳の仲よしコンビです。

ノラ母さんを交通事故で亡くしたゴローくんが、子猫のときにここにやってきたとき、サチおじさんのことが、すぐ好きになりました。

あんまり動かずにぼーっとしているけど、やさしいさっちゃんのそばにいるとすごく安心できたのです。

「さっちゃん、おはよう、スリン」「さっちゃん、そばにいていい? スリン」

だけど……いつからか、スリンすると、さっちゃんはバタン!とコケてしまうように。

さっちゃんは小柄なままなのに、ゴローくんがどんどん大きくなっていたのでした。

ゴローくんは、賢そうな瞳とふさふさの黒いしっぽをもった、フレンドリーな美青年に成長しました。

今も、さっちゃんを見つけると飛んでいってスリンするのは同じ。でも、散歩の先導をしたり、そばに寄り添う姿は、凛々しいナイトのよう。

さっちゃんは、よく麻里子ママにヤマザクラの広場に連れて行ってもらいます。

花はなの里が全部見渡せる気持ちのいい場所。起伏のない草むらなので、さっちゃんには歩きやすく安全なのです。ゴローくんもついてきました。

さっちゃんが歩き始めると、すぐさまベンチから下りて、お決まりのスリン。待って、待って、ボクも一緒に行くよ!

歩き回った後、ベンチでふたり頭をくっつけて風の音を聞きます。あ、さっちゃんの頭に、テントウムシ!

さっちゃんを赤子のように抱くとき、麻里子ママはふと思い出します。 

10年前、ここに子猫が連れてこられた日のことを。抱き上げると、小さな手足を突っぱってブルブルと震えていた……。

さっちゃんは、他の人に抱かれると、緊張して、体のこわばりがひどくなって、目を見開きます。

でも、麻里子ママに抱っこされると、ほら、こんなに目を細めてリラックス。

さっちゃんが麻里子ママに甘えるそばで、ついでに甘えてしまうゴローくん。

この10年、マヒゆえの病気でもうダメと思う危機も何回か。それでも、サチは復活し、仲間の待つ里山に戻ってきました。

幸せになろうね、サチ。

初めて会った日の約束は、まあまあ果たせているかな。麻里子ママはそう思っています。

里山の子、さっちゃん
佐竹茉莉子・著

定価:1320円(税込)
単行本(ソフトカバー)
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写真と文:佐竹茉莉子

※犬猫たちの顔ぶれは、本書発行の2017年当時のものです。カフェは現在休業中。

 

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