さっちゃんのガールフレンドは、そうちゃん。夏休みになると、家族と一緒にキャンプ場に泊まりに来ます。
夏休みの里山は、のんびりムード。長平パパや麻里子ママは変わらずいそがしいけれど、犬猫たちは、思い思いに好きな場所でくつろいでいます。
カフェのテーブルの上で昼寝しているのは、かっちゃん。昼寝場所はその日によって違って、ピザを焼く窯の前だったりします。
ハッピーは、カフェの前の石段が好き。山からの涼しい風が通り抜けるし、お客さんが来たら、おやつをおねだりできるから。
山側の緑の木陰を散策しているのは、ライムちゃん。
かっちゃんは、デッキステージの脇にある大きな石の上が、ひんやりして気に入っていて、夏の間のクールベッドにしています。
今日は、遠くから、さっちゃんの友だちが来るんだって。
パパとママと一緒にロッジに着いたのは、キヨカさんリナさん姉妹と、そうちゃん。
さっちゃんと同じキジトラ猫ですが、さっちゃんより5歳年下の4歳。2年前の夏、キャンプ場に一家でやってきたのが、さっちゃんとの出会いでした。
そうちゃんも、さっちゃんと同じく、子猫の時に全身がマヒした状態で拾われました。さっちゃんのように四肢を突っぱることはありませんが、歩くことはできません。
そうちゃんには、てんかんの発作もあるので、毎朝毎晩薬を飲ませなければなりません。トイレの介助も必要です。トイレに行きたいとき、そうちゃんは家族にわかる合図を出します。
そんなわけで、キヨカさんの一家は、誰かが家に残ってそうちゃんの面倒を見ます。一家そろって出かけるときは、そうちゃんも連れて行きます。
キヨカさんのお父さんは、日頃からこんなことを言っているのですって。
「そうちゃんは、ふだん歩くこともできずに、家の中でじっとしているのだから、夏休みには、動物OKのところへどんどん連れて行って、いろんなものを見せてあげよう」
サッカーの応援にも、お花見にも同行します。
歩けないそうちゃんは、抱っこされて移動することに慣れているし、旅先で行方不明になることもありません。
この日は、2年ぶりの花はなの里訪問。来る途中、房総の海にも寄ってきました。初めて見る海。初めてかぐ濡れた砂の匂い。そうちゃんはうれしそうでした。
キヨカさんは、草の上で、さっちゃんの隣に、そっとそうちゃんを支えて立たせてやりました。
2年ぶりだったのに、そうちゃんはやさしくさっちゃんを舐めて、親愛の情を見せました。ちょっと照れるさっちゃん。
夏草の上で風に吹かれるふたり。さっちゃん、まだ照れてます。
行く先々で、そうちゃんを見て、「かわいそう」と、涙ぐむ人がいます。拾った時に、連れて行った獣医さんにもこう言われました。
「この子は、歩けないし、てんかんの発作もあるし、けっこうお金がかかりますよ。どうしますか」
その意味がわかって悲しかった、とキヨカさん。そうちゃんを家族にし、幸せにすると決めていたから。
いろんなところへ連れて行ってもらえるそうちゃん。ここでいろんな体験ができるさっちゃん。どっちも、ものすごく幸せな子です。
写真と文:佐竹茉莉子
※犬猫たちの顔ぶれは、本書発行の2017年当時のものです。カフェは現在休業中。