ネコのとなりに [第10回] 心と模様

ネコは身近な動物で、ヒトの社会の中で暮らしています。そのため野生動物とは異なり周囲の環境も含め、ヒトがいてネコは生きていけると思うのです。ヒトとヒトの間に繋がるいのち。今を生きる友達として向き合いながら、街の中にネコのいる風景が時代は変わってもあり続けてほしいと願うばかりです。

写真・文・イラスト平井佑之介

白黒の模様は緑や町中で目立つ。さらには尻尾の先が豆電球をつけているように白いものだから、余計に印象的だ。オスネコはその白黒のツートーン模様から〝ツートン〟と呼ばれている。道路わきの草むらに入り、縁石の上をのんびりと歩く。そばに咲いた紫陽花の花を持ち上げるように、鼻で押した。


▲ころころと”ツートン”はよく遊び、楽しむ

昼寝をしていた〝ツートン〟がサンダルの足音に顔を上げた。近所に住む兄ちゃんは、引っ越してきて2歳くらいの〝ツートン〟とはじめて出逢った。

「ちょうど今年〝ツートン〟が9歳になる年ですよ」と話す声に〝ツートン〟も足元までそっと駆け寄る。


▲顎を上げると口元の模様が三つ葉のクローバーのようだ

兄ちゃんが撫でようと近づくと、慌てて駆けるように先導して、両手をそろえて伏せのポーズをとり腰を高くして撫でてくれと目で催促する。背中をポンポンされると目を細めて、鼻を突き出す仕草はどこか嬉しそうだ。ちょいと顔を上げて、兄ちゃんと目が合うと、少し距離を取って撫でてくれポーズを繰り返す。


▲抱っこは友達の証

「〝ツートン〟はあまり鳴かないんですよ。近所に暮らす兄弟ネコの中でも体が大きいけれど、ここにいるって主張もあまりしない。見当たらないので帰ろうとすると、ちょこんと座っているようなやつなんです」と両手で抱き上げられた〝ツートン〟は安心して脱力している。


▲静かな場所がお気に入り

小さな丘にそよ風が吹く。日が沈むのを眺めているのか〝ツートン〟がこちらに背中を向けて佇んでいた。時折地面の匂いを嗅いでいると、こちらに気づいて突然お腹を出してひっくり返った。左右にコロコロ揺れているのは、どんな理由があるのかな。仰向けに寝転んで見上げた空の模様にネコは何を想うのだろう。


▲静かに「ここにいるよ」と伝える

あくる日〝ツートン〟がどこにいるのかと探していると、ユキヤナギの枝の間から顔を出す。枝を持ち上げるように鼻で押した後、ちょこんと座る。

「ここにいるよ!」と気づいてほしいの? それじゃあ、たまには「ニャ」と鳴いて教えてくれたらいいのに。どんな心模様なのだろうか。一緒に座り込んで、少しココロがわかるくらいに時間を過ごしたい。


▲なんとなく照れくさそうな”ツートン”

Hirai Yunosuke
いきもの写真家。1988年生まれ。日経ナショナルジオグラフィック写真賞2015優秀賞。島や商店街で暮らす猫から、イルカやヘラジカなどの野生動物も撮影。『Nikon D800 ネコの撮り方』電子書籍出版。

Instagram:yunosuke_hirai
Facebook:https://www.facebook.com/YunosukeHiratan
「kemonomichiいきもの写真家のお店」にてオリジナルグッズを好評発売中。https://kemonomichi.thebase.in

-コラム
-