身近な存在ゆえに意外に知っているようで知らない、猫の生態。あなたはいくつ知っていますか? 猫って実はこんな生き物なんです。
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猫ってどんな生き物?
小さなハンター
猫はライオンやトラなど、大型のネコ科動物と同じく肉食動物。ネズミやウサギなどの小動物や、鳥や昆虫を食べます(ネズミなら1日に10 匹程度食べるといわれています)。
ペットフードが充実している昨今ではネズミなどを主食にする猫は少なくなりましたが、「体のしくみ・習性・遊び」など、あらゆる面で待ち伏せ型のハンターとしての優れた能力は未だ健在なのです。
キレイ好き
猫はとてもキレイ好き。自分で毛繕いもできる上、トイレの後始末にも余念がありません。砂かけを念入りにした後は自分でお尻も舐めてキレイにするのは猫ならでは。
身の回りを常に清潔に保つことを心がけているのは、猫が自分のニオイで獲物に気づかれないようにするためのハンターの心得です。トイレも掃除を怠るとしなくなってしまうこともあるので要注意。
よく寝ます
語源は「寝子」という説もあるぐらい、1日の大半を寝て過ごします。平均睡眠時間は16 〜18 時間。それも、一度食べて十分な栄養補給ができたらあとは体力を温存した方が効率的という肉食動物ならでは。
ただ、完全に熟睡しているのはわずか4時間程度であとはうたた寝(レム睡眠)状態。猫が夜から明け方にかけて急に興奮して走り回る時間帯はネズミの活動時間と重なるといわれています。
好奇心旺盛? 臆病?
子猫は何にでも興味津々でまるで好奇心のかたまり。しかし、どんな猫もみんな好奇心旺盛でフレンドリーというわけではありません。
成長につれ生きる上で欠かせない「警戒心」が芽生えると、この両者のバランスで性格が決まるからです。
この割合は猫によって違うので、物怖じしないアイドル猫がいたり、飼い主以外に姿を見せない内弁慶がいたり、性格は猫の柄のように多様なのです。
高い・暗い・狭いが大好き
すべて祖先から受け継いだハンターの名残り。かつては高い木の上から方々を見渡して獲物を探したり、砂漠の中にある岩や木の洞うろなどのわずかな隙間を寝床にしていたため。
それゆえ、今でも家の中を見渡せる家具の上や暗くて狭い押入れなど、思いもよらない場所が猫にとっては落ち着ける安全地帯なのです。
ひとりだって平気
群れで集団行動する犬と違い猫は単独で狩りをするため、ボスも社会的順位も必要としません。いたってマイペース、日中ひとりで留守番するのも問題ありません。
ただ単独行動ゆえにテリトリーをとても大事にします。普段から見回りを欠かさず、あちこちでせっせと爪とぎやスリスリ、オスは尿スプレーをするのはニオイを付けて自分の縄張りを主張するためなのです。これをマーキング行動といいます。
猫の体のしくみと機能
一般的に私たちが「猫」と呼んでいるのは「イエネコ」のことで、4500年前にエジプトで穀物をネズミの害から守るために 家畜化された「リビアヤマネコ」が直接の祖先。
大陸から仏教の伝来とともに日本にやってきたといわれるが、体の機能は 砂漠で暮らすハンター、リビアヤマネコの特徴を残している。
猫の五感の特徴
臭覚
猫の嗅細胞は人間の約2 倍、人間の数万倍の鋭い嗅覚を持っているため、視覚より嗅覚で情報を得たり判断している。
普段健康な鼻は湿っていて、温度変化まで感知しているとも。上顎の奥にあるヤコブソン器官にも嗅覚があり、フェロモン(生理活性物質)などのニオイを嗅ぎ分けているため、ニオイを感知して唇を引きあげる「フレーメン反応」が起こることも。
視覚
めまぐるしく変わることを「猫の目」に例えられるほど、瞳孔の大きさをクルクルと変えながら光を調節している。
また、暗闇で猫の目が光るのは網膜の裏のタペタムという反射板があるため。このタペタムに反射させることで暗闇でも人間の5〜6倍も明るく見えるとも。
ただ、視力そのものは人間の10分の1 程度で色の識別も苦手。赤は認識できないとされる。
味覚
猫にも人間のように味を感じる味み蕾らいがあるものの、あまり発達していないとされ、しょっぱさや酸っぱさは敏感に感じ取れても甘味はあまり感じないといわれている。
ただ、甘味の中でも猫の必須栄養素・タンパク質の成分であるアミノ酸の甘さは感知できるそう。ちなみに、あんこなどを食べる甘党の猫もいるが、それは人が味に慣れさせてしまったためと考えられる。
触覚
ひげの根元には神経が集中していて、触れたものの情報を即座に感知できる。ちなみに、顔とあごの周りには、フェロモンを出す器官が多くある。フェロモンは猫の性行動や友好をつかさどる物質で猫の生活になくてはならないもの。
猫のスリスリはこのフェロモンを自分のお気に入りになすりつける行動。臭いはしないので、人間が嗅ぐことはできない。
聴覚
人間の可聴範囲が20〜2万ヘルツに比べ、猫は45〜6万4000ヘルツといわれる(ちなみに犬は67〜4万5000 ヘルツ)。
人間には聞こえない超音波もキャッチできる。耳の筋肉も発達しており20 以上の筋肉を使って自在に耳を動かし、音がする方向を即座に察知することができる。
遠くの獲物が立てるわずかな音や鳴き声を聞き逃さないために高度に発達したといえる。
猫の各部位の特徴
【目】抜群の動体視力と暗視能力
瞳の色は猫によって青・黄・緑とさまざま。夜行性で暗闇でも獲物がよく見える暗視能力と、動くものに俊敏に反応する優れた動体視力を持つ。
【耳】聴覚は人間の3倍
人間の3倍ともいわれる聴覚。人間よりも2オクターブも高音域の音を聞き取る能力が備わっている。耳をすばやく動かして音の出所をキャッチする。
【鼻】情報はニオイでキャッチ
猫の嗅覚は人間の数万倍。食欲はニオイで促されるため、鼻が詰まると食べ物を認識できなくなるので要注意。
【口】獲物を捕らえる最強の武器
獲物に噛みつく犬歯と肉を切り裂く臼歯がある。舌には無数のザラザラした突起があり、これはリビアヤマネコの子孫ならでは。野生のツシマヤマネコなどにはない。
【爪】出し入れ自在の武器
木に登ったり獲物を押さえこむ時に刺して使う。薄い層が重なってできており、古くなると爪とぎにより上から順々にはがれていく。
【肉球】忍び足ができるクッション
プニプニのクッションのお陰で獲物に気づかれずに忍び足で近寄れ、滑り止めの役割も果たす。また肉球には汗腺があるので緊張した時には汗をかく。
【ひげ】頼りになるセンサー
口の左右、目の上、頬、顎、前足の後ろにも生えている。
【足】優れたジャンプ力
自分の体長の5倍の高さまでジャンプできるといわれている。ジャンプ力と瞬発力に優れているのは後ろ足の筋力が特に発達している猫ならでは。
【しっぽ】長さ・形はさまざま
中でもかぎしっぽは、東南アジアに由来する猫に遺伝することが分かっている。
【毛】毛艶は健康のバロメーター
外側のアウターコートと内側の柔らかいアンダーコートの2 種類の毛に覆われている(どちらか1 種のみの猫種も)。体温を一定に保ったり、体を守るクッションの役割も。年間を通して抜け替わる。
監修:南部美香
文:高橋美樹 イラスト:おかやまたかとし
※この記事は、本書に収録されている『ネコまる』への投稿写真を使用させていただきました。