この世界の片隅で、ネコ。EP:48「関取」

「関取」

公園そばに住むノリトモさんは太っている。はっきり言ってデブだ。

彼の前で「太っているね」と言うと…何も起こらない。

だが「デブ」と言うと…表情が変化し、つれなくなる。

子供たちから笑われながら「デブ」と言われ続け、バカにされているのが解ったのだろう。

「デブ」は彼にとって禁句だ。

それでも人間嫌いにならないのが彼の性格の良さを表している(子供は嫌いだけど)。とても人懐っこくて明るい。

おなかまで撫でさせてくれる。

運動神経はバツグンで体も柔らかい。アスリートだ。

あっ、太ったアスリートと言えば…「相撲取り」になるんだ。とてもいいじゃないか、彼に四股名をつけよう。

「黄色山」と言うと…反応はない。

「茶虎丸」はどうかね…尻尾が動かない。

「紅炎(こうえん)」はどうだ…気に入らないみたい。

「海苔友」…すると、はーい、と言わんばかりに尻尾をバタバタさせる。

なんだ、結局いつもの名前を漢字に変えただけ、当然か。海苔友関。だけど声に出してみると何だか凄く強くなったみたいだ。

太っててもいいんだよ、なにせ"猫"力士なんだから。本物の力士をパシパシ叩くように海苔友関のおなかを触る。

「海苔友関、来場所も期待してるよ」

そう言ってみるとまんざらでもなさそうだ。気持ちよさそうに眼を細める。

ごっつぁんです。

text&photo/Kenta Yokoo

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