「関取」
公園そばに住むノリトモさんは太っている。はっきり言ってデブだ。
彼の前で「太っているね」と言うと…何も起こらない。
だが「デブ」と言うと…表情が変化し、つれなくなる。
子供たちから笑われながら「デブ」と言われ続け、バカにされているのが解ったのだろう。
「デブ」は彼にとって禁句だ。
それでも人間嫌いにならないのが彼の性格の良さを表している(子供は嫌いだけど)。とても人懐っこくて明るい。
おなかまで撫でさせてくれる。
運動神経はバツグンで体も柔らかい。アスリートだ。
あっ、太ったアスリートと言えば…「相撲取り」になるんだ。とてもいいじゃないか、彼に四股名をつけよう。
「黄色山」と言うと…反応はない。
「茶虎丸」はどうかね…尻尾が動かない。
「紅炎(こうえん)」はどうだ…気に入らないみたい。
「海苔友」…すると、はーい、と言わんばかりに尻尾をバタバタさせる。
なんだ、結局いつもの名前を漢字に変えただけ、当然か。海苔友関。だけど声に出してみると何だか凄く強くなったみたいだ。
太っててもいいんだよ、なにせ"猫"力士なんだから。本物の力士をパシパシ叩くように海苔友関のおなかを触る。
「海苔友関、来場所も期待してるよ」
そう言ってみるとまんざらでもなさそうだ。気持ちよさそうに眼を細める。
ごっつぁんです。
text&photo/Kenta Yokoo