このところ、円安の影響で日本人にとって海外旅行は足が遠のいていく一方。そんな中、SNSやYouTubeを通して、海外の情報をチェックしたり、街並みを観賞したりしながら、旅行気分を味わっている人も少なくないのではないでしょうか。
今回ご紹介する「meow.in.hk」は、まさにそんな方にオススメしたいInstagramアカウントです。毎日アップされる香港の
街猫や店猫たちの自然な姿を通して、チラリと垣間見られる香港の街の雰囲気は、ノスタルジーが掻き立てられると同時に、いつまでも見ていたくなる癒しの空間になっています。
今年の1月に開設されたこのアカウントの管理者は、建築のグラフィックデザイナー、ブライアン・リーさん。なんと、もともとは猫にも写真にもほとんど興味がなかったというのです。たまたま長期の仕事先がある上環(ションワン)が、古くからの乾物やお茶などの問屋街で、店猫や街猫が多い地域として有名だったことから(CNNでもたびたびご紹介しました)、通勤時や昼休みに猫を見かける機会が増えていきました。
そんな日々を過ごしているうちに、仕事でストレスを抱えていたり、行き詰まったりした時に、ふと猫の姿を癒しとして求めている自分に気づき、スマホに収めるようになったのだそう。そしてその画像は、スマホのストレージがいっぱいになるほどに。なんとかしなければと思いついたのがインスタグラムの開設で、ストレージ不足解消のための苦肉の策だったのです。
だから、一貫して画像には、加工も猫をかわいく撮ろうとする人為的な努力も一切なし。自然に見たまま、あるがままを撮って投稿していただけだったそうです。
ところが、「禁止毆打客人(お客さんを殴るな)」と注意書きされた箱の中で、カメラに向けた渋い表情が何とも言えない猫の投稿が、台湾、香港などのメディアの目に留まり大きく取り上げられたことから、いわゆる「バズッた」状況に。当初はほんの数十人だったフォロワーが3ヶ月足らずで1万人に達し、現在は2万人越えとどんどん拡散されています。そして、ブライアンさん自身インスタを通じて、「猫奴(マウド)(広東語で猫が好きすぎる人のことを猫の奴隷といいます)」たちとの交流が広がり、休みの日にも猫を求めていろいろな街に足を運ぶようになったそうです。
「始めに猫ありき」でないからこその自然体のスタンスが、最大の魅力なのだと感じました。ぜひ皆さんも「meow.in.hk 」をチェックしてみてください。そして、ここで出会った猫たちに、気軽に会いに行ける日が一日も早く訪れますように。
(文・塚碕由香/写真提供・Brian Lee)
Tsukazaki Yuka
在香港歴26年のフリーライター。広東語で通訳、翻訳、日本語教師などもこなす。著書に『香港の大スター☆クリームあにき』(辰巳出版)。