静かな住宅街の一角にある「橘湯」は、地元の方々に愛される銭湯だ。しかし近年、遠くからも多くのお客さんが訪れる。
その理由は入浴料500円で黒湯温泉、ジェットバスをはじめ人気のサウナ、外気浴まで楽しむことができるうえに、看板猫がお出迎えしてくれるという嬉しい癒しの場所だからである。
橘湯は店長の堀田雅司さんの祖母の代から続く銭湯。
「温かいせいでしょうか、かつては住み着く野良猫も多く、僕は幼い頃からいつも猫と一緒にいました」。そしてミケは、ケガしていたところを保護して看板猫に。
「なかなか僕には馴れてくれなくて……」
でもやがて、いつも後をついてくるまでになった。
そんなミケ、開店までは脱衣所などを自由に歩き回り、3時になるとスイッチが入ってフロントの中へ。番台のお姉さんの膝の上がお気に入りだ。訪れたお客さんは、ミケに挨拶して銭湯に入る。
ミケを見られるよう子供用の踏み台も用意されていた。「ミケがきっかけで仲良くなったお客さんもいっぱい。たくさんの縁を繋げてくれました」とスタッフの島崎瑠香さん。ミケへの愛情は店長にも負けない。
しかし今夏、ミケは体調を崩して看板猫を引退し、家猫として静養したが、儚くも亡くなってしまった。
「ミケさんは自分の役割をちゃんと理解している賢い猫でした。だから、いつか生まれ変わって橘湯に戻って来てくれると思います」と店長。ミケが怖がるからと延期していた改修の準備を始め、「今度は最初から看板猫の居場所を番台に作ろうと思うんです」。
ミケさん、きっとこの橘湯に帰ってきてくれるよね!
橘湯
神奈川県川崎市中原区苅宿36-32
営業時間/15:00~23:00
TEL 044-411-8010
定休日/火曜
instagram:tachibanayu_sento
取材・鈴木美紀