「ヨシ子の宿敵」
昭和の香りが漂うその裏通りには猫が沢山いた。
特に古い、焼き板塀に囲まれた建物には2匹の雌猫がいた。
ヨシ子とガニ美は犬猿の仲でバッタリ出会うといつも唸り威嚇しあっていた。
もともとはヨシ子さんの家なのだが…。
(ちなみにガニ美はガニ股なので近所の人が面白がって付けた)
ある日。
ボス猫とヨシ子さんが裏の空き地で愛を語らっていた時、ガニ美が乱入して修羅場になった。
ボスは気まずそうに何処かへ消えた。
しばらくして近所の事情通のおばさんからボス猫はガニ美の息子だという話を聞いた。
なるほど。
そうなるとこれはいわゆる嫁と姑の関係だ。
やっぱりネコの世界でも嫁姑問題ってあるのか。
猫でもそうなってしまうのか…。
少し哀しいがどこか可笑しい。
そして熊本地震が起こった。
古い町並みは景色が一変していた。
しかし奇跡的にヨシ子さんの家は無傷だった。
ヨシ子さんの家は近所の猫達の為、非常食を用意した。
いろんな猫が出入りしたが不思議と争いは起きない。
そしてヨシ子とガニ美を見つけた。
なんと一緒に餌を食べていたのだ。
あんなに険悪な仲だったのに…。
猫も非常事態を理解しているのだろう。
感動した。
そして2年がたった。
ヨシ子とガニ美はあれを機に仲良く…はならず相変わらず喧嘩ばかりだ。
嫁姑問題ほど難しいものはない。
text&photo/Kenta Yokoo