玉野御嶽神社は慶応3年(1867)、御嶽信仰の厚い玉野村の人々によって山麓に創建され、明治15年に現在の場所に遷座された。東海自然歩道の登山口から15分ほど山を登ると社殿が見えてくる。石階段の前は園地になっており、天気がいい日は名古屋のビル群を望むことができる。しばらく景色を眺めていると、どこからか猫たちがやってきて出迎えてくれた。
「20年ほど前のある日、息子が学校の帰りに子猫を保護してきました。私は元々犬派だったのですが、貰い手が見つかるまで家に置いていると猫の魅力にどっぷりはまってしまい、クーちゃんと名付けて飼い始めました。一緒に布団で寝ることもありましたね」と宮司の加藤剛之さん。
「猫がダメだったことに自分が一番驚いています(笑)。それからは猫がいない日はありません」と笑顔を見せる。
広場に行くと、ベンチで食事をしている参拝客のそばで、クリがゴハンのおねだりをしていた。ペコとアシュリーは参拝客の膝の上でうたた寝している。猫も人もお気に入りの場所を見つけて、ゆったりとした時間を過ごしていた。
「今は15匹ほどの猫たちがここで生活しています。2年前にInstagramを始めると、猫がいる神社として知られるようになりました。昨年には禰宜(息子)が戻ってきて、手描きの猫の御朱印も始めたんですよ」。
人懐こいペコと、三毛猫のアシュリーは特に人気者だ。
「猫は他の動物にはない、人の言葉や心がわかる能力を持っていると思います。参拝客の中には、癒しを求めてくる人もおり、猫たちはそういった方に、そっと近づいていきます。人が猫を選ぶのではなく猫が人を選び、癒されにきた参拝客へ満遍なく力を発揮しているようです」
日が沈む前に帰ろうと、麓へ降りる階段に向かう。振り返ると、ペコが見送ってくれた。一日付き合ってくれてありがとう。次はお弁当を持って遊びに来るからね。
玉野御嶽神社
愛知県春日井市玉野町1661
TEL 0568-51-2060
Instagram:tamanoontakejinja
小森正孝(写真・文)
1976年生まれ、愛知県一宮市出身。大阪芸術大学写真学科卒業。同大学副手として研究室勤務。現在フリーカメラマンとして猫撮影を中心に活動。写真集『ねころん』(株式会社KATZ)等。
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