墓地にいくとよく猫がのんびりしている。墓地という性質上、人間の出入りが少ないから居心地がいいのだろう。
猫にまつわる不思議な事があった。
川沿いにあるとある古い墓地。隣にあるお寺さんが管理している。そこにテラオという猫が飼われていた。
テラオの縄張りはもちろんこの墓地、必ず毎日パトロールしていた。
ある日、猫のパトロールが観察したくてテラオに密着、後ろを付いていった事がある。
ところどころ匂いをかぎ、つけ、ヨシッ!!という感じでゆっくりと歩いていく。
暫くして…墓地の端まで辿り着く。そこには。
「猫の墓」
と書かれた簡素なつくりの墓標が建っていた。
ああ、お寺さん、猫好きだからここに亡くなった猫を埋葬しているのか…。
テラオは墓標前で立ち止まり、そして踵を返し元来た道を戻っていく。パトロールは終了と言わんばかりに。
僕にはそれが死んでいった仲間に祈っていたようにも見えた。
一日あったことを天国の仲間たちに報告して。だから一瞬立ち止まったのではないか。
…そんなバカな。考えを打ち消す。
あくる日。
またテラオのパトロールに同行。…するとどうだ。先日歩いた道と寸分たがわぬルートを歩いていくではないか。まあ、匂いをつけてるからそを見回っているのかな…。
そして猫の墓。やはり一旦ここで立ち止まって、踵を返す。パトロールが終わった。
猫が祈るなんてありえないとは思う。しかしまるで墓守のような猫だな、とは思う。
テラオは数年後亡くなり「猫の墓」に埋葬された。
二代目の墓守はいまのところ、いない。
【横尾健太】Yokoo Kenta
Twitter 猫島警部 @nekojimakeibu
熊本市在住。1999年より細々と猫写真を撮り始めて今では太々と猫に浸かる。2016年熊本地震で被災、一時的に東京へ避難。その先で様々な人と猫に癒されお世話になる。「ネコまる大賞」「猫の手帖キャネット大賞」「よみうり写真大賞ファミリー部門季節賞」受賞。使用機材:通常はニコンのD800、旅先はペンタックスのKP、夏はニコンのnikon1 J5。でも機材にこだわりはありません。
プロとはそれで生活できる人だと思うので、アマです。なにもかも脇が甘い性格。写真におけるスタンスは皆無です。猫さまを見ると興奮して「あ、あ、あ」となり何も考えずにシャッター切ってます。「猫を使って金儲け」よりも「金を使って猫儲け」したいな。いろんな猫に出会いたいです。