名物はかつサンドと猫 | 東京・台東区の居酒屋「鳥越まめぞ」

「いらっしゃいませ〜」とお出迎えしてくれるこじろうくんは、渋さと柔和さを併せ持った老紳士。寝グセのついたおひげはご愛嬌

 

今回は、浅草橋と蔵前の間に位置する鳥越本通り商盛会、通称「おかず横丁」をぶらりお散歩します。

この辺りはかつて町工場が多く、朝から晩まで忙しく働く人たちの胃袋を満たす惣菜屋が軒を連ねていた通り。現在はお店の数も少なくなりましたが、昭和から続く下町風情は健在です。

「出没! アド街ック天国」(テレビ東京)でも紹介された「まめぞの名物かつサ ンド」は一皿1,000円(税込)。肉の厚み、ソースの香ばしさ、そしてパンのしっとり感が絶妙にマッチして いる

 

そんな商店街に佇む小さな居酒屋「鳥越まめぞ」は、ドラマ「孤独のグルメ」(テレビ東京)にも登場した有名店。「まめぞの名物かつサンド」を求めて、全国からお客さんが訪れます。

そして、この店のもうひとつの主役は猫たち。猫好きの間では、猫のいる居酒屋として知られています。

看板を張るのはキジシロのこじろうくん(17歳♂)。この日はちょうどお昼寝から起きてきたところでした。

寝ぼけ眼で女将の中尾早苗さん(62)に「おやつください」と甘える食いしん坊な姿がなんとも微笑ましいです。

きりりとした切長の目に、美しく散った三毛柄。おせんちゃんにはめったに会えないが、この気高さ は一度見たら忘れられない

 

先代看板猫のこたろうくん。多くの常連客に愛された彼は、きっと今もどこ かでお店を見守ってくれている

 

こじろうくんは、生後4ヶ月で他の子猫たちと一緒にお店へやってきました。しかし、その子猫たちが次々とFIP(猫伝染性腹膜炎)を発症。彼だけはお母さんが違ったため、感染を免れてひとり残ったのだそうです。

生命力を感じさせる堂々とした佇まいに甘いマスク。右後ろ脚にはピンクの肉球に黒のハートマークがあって、見ることができたら幸運が訪れるとの噂もあるのだとか。

この日は背中を撫でさせてもらい、とてもハッピーな気持ちになりました。

見ているだけでお腹が空いてくるラインナップ。メニューはがっつりと した揚げ物が中心で、カウンター越しに店主・中尾久泰さん(68)の技が光る

 

お店にはもうひとり、三毛猫のおせんちゃん(15歳♀)がいます。まるで日本画から抜け出て来たような、それは上品な美猫さんです。

凛として窓辺から外を覗く姿は、通りを歩く人たちの癒しそのもの。ただし会えるのは運の良い時だけで、〝幻の猫〟としてファンを惹きつけています。この日は奇跡的に姿を見せてくれました!

町工場が多かったこの地 域では昭和の時代から夫婦共働きの家庭も多く、夕飯の支度をする間もない人々の食卓を支えたのがこの 「おかず横丁」。東京下町の雰囲気が残る通りは、夕暮れ時の散歩がおすすめだ

 

現役の看板猫はこのふたりですが、8年間お店を見守りつづけた初代看板猫、キジトラのこたろうくんも忘れがたい存在です。気は強かったけれど愛嬌たっぷりで、いつも常連さんたちを笑顔にしていたといいます。

そんな先代の魂が、こじろうくんとおせんちゃんを通して今も息づいているような気がして、どこか懐かしい気持ちになりました。

寝ぼけ眼でもしっか りおやつは催促

 

おすすめの時間帯は夜の開店直後、または閉店前の静けさが訪れるころ。「孤独のグルメ」の五郎さんのように静かに料理を味わいながら、ふと視線を感じたらーーきっとそこに、猫たちのまなざしがあるでしょう。

この日は幸運の右後ろ脚の肉球を拝めず。「そう易々と見せるもんじゃあないのよ」

 

鳥越まめぞ
東京都台東区鳥越1-1-5
TEL:03-5829-9877
営業時間:月・土曜/18:00〜22:00 火〜金曜/11:30〜14:00、18:00〜22:00
定休日:日曜・祝日(土曜不定休)
http://mamez.jp

文・写真・芳澤ルミ子

-猫びより